#33
その際一人の冒険者が近付いてきた。
「なあアリシア、
「ま、色々あってね」
「気を付けろよ。孤児院が
「感謝する」
「え~っっと、派手にやり過ぎましたかね?」
「派手過ぎるに決まってるだろうが。
「そうすると、防衛力の強化も考える必要がありますね」
「孤児院を要塞化する気か?」
「子供たちの為なら」
「だから、過保護過ぎるっての」
そんな話をしながら、俺たちは孤児院に帰って行ったのである。
◇◆◇ ◆◇◆
カラン村の
もっとも、このひと月忙しかったのは、多分に俺が
とはいえ時間が作れるのなら、“自称”博物学者としてはしなければならないことがある。
フィールドワークだ。
俺の〔
なら、
〔
孤児院の子供たちの為に食用獣や魔獣の討伐も行った。こちらは
食用獣や食用に足る魔獣の討伐は、鉄串を使うことで随分楽になった。何しろ
肉はそのまま保管庫で熟成させ、一定量の肉は干し肉や燻製、塩漬け等に加工し、一部の肉は業者に卸す。生肉で処理出来ない量の物は俺の〔無限収納〕に移す。
孤児院の子供たちの為に狩ってくるものは、その他に山菜や川魚などもある。
山菜は
魔石もまた大量に貯蔵されているが、こちらの使途は今のところ多くない。勿論売却しても良いのだが、魔石を売却してまで資金を調達しなければならない事情もない。
魔石は、日常生活で結構使い道があるのだ。
たとえば、火の魔法をガラスや水晶の中で燃やせば、歴とした照明になる。そしてその燃料代わりに魔石を使えば、最下級のものであっても3ヶ月は交換不要なのである。
その他にも魔石は空気清浄機や水質浄化などにも使え、勝手が良いのだ。
ただその為にはその属性の魔法使いが必要で、依頼すると安くない報酬を要求される。
幸いセラ院長が風属性の魔法を使えるので、トイレや浴場、食材保管庫などの換気に使用している。これまで衛生概念という考え方がなかった為、こういう使い方を考えたこともなかった、とはセラさんの弁。
何度か、【
アリシアさんはコボルト討伐戦の後、主武器たる
俺が
「剣を作ってもらうときに於いて、一番重要な要素は何だと思いますか?」
「素材と、重量、か?」
「どちらも外れです。素材は良いに越したことはありませんが、予算との兼ね合いもあります。無い物ねだりをしても仕方がないでしょう。
重量も、重要ではありますが一番ではありません。
最も重要なのは、
重心は、先端(打撃位置)に近ければ近いほど威力が増します。正確には、剣の重量をそのまま威力に転化出来ます。
その一方で、手元に近ければ近いほど、扱い易くなるんです。
だから、
普段は広く持つことで、それぞれの重心と手首の間の距離を縮めます。
で打ち込むときには柄頭の近くを握ることで、先端の重心との距離を開けて威力を倍加させるのです。
長剣はそういった使い方が出来ませんから、扱い易さを優先するか威力を優先するか、選択する必要が出てくるんです」
ちなみに、戦場で最も効果を発揮する武器が
ただ長いので持ち歩きに不便、というのが唯一といって良いほどの欠点だが。
結局、これまでの長剣よりは刃身と柄をともに長くすることで、重心位置はこれまの長剣と同じ位置にありながら、全体のバランス的には手元寄り、とすることにした。
また柄を長くすることにした結果、必要に応じて両手持ちと片手持ちを使い分けることが出来るようになった。
……これって、ブロードソードというより、
◇◆◇ ◆◇◆
全てが順調、と思いきや、一つだけ予定通りに行かないものがあった。コークスの生成だ。
コークスは、石炭を蒸し焼きにすることで作られる。薪と木炭の関係が、石炭とコークスの関係なのである。
しかしそれは、一斗缶程度のサイズの小規模な実験ではコークス化を成功させられたが、炭焼き小屋レベルで大規模に蒸し焼きをしようとすると、どうしてもコークス化しない部分の方が多くなった。
原因がわからないので、この件は諦めて別の方法を模索することにした。
そんな日々を送っているうちに、俺とアリシアさんの二人に、
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