反抗期の男の子は大変可愛いです!

 今日は訓練が休みになった。と言うのも、今森の様子がおかしいらしく、他所から強い魔物が侵入してきて魔物の活動が活発化しているかもしれないとの事だ。

 その為、今は自警団で森の奥を調べていて、問題がありそうなら街の冒険者を雇って大規模な間引きを行うらしい。


「ラナ、聞いてる?」

「ええ、聞いてるわ。私がユーリの言葉を聞き流す訳ないでしょ?」


 訓練が休みになった私は、出来た時間を有効活用してユーリの訓練をお手伝いしている。

 具体的に言うと、ユーリの汗を拭いてあげたり、森でユーリに丁度良い長さの木枝を見つけて来たり、丁度見かけた魔物を狩って夕飯のおかず用に持って帰ったりなどだ。ちなみに、魔物に関しては森で拾ったと言ったら信じてくれた。ユーリは本当に素直で可愛い。


「それで、ご両親がユーリの話を聞いてくれないって話よね?」

「そうなんだよ。僕が冒険者になりたいって言ったら『腕力も体力も無いお前に出来る職業じゃない』ってバッサリさ」


 ユーリは今でも木枝をブンブン振り回して訓練をしている。師匠はおらず我流で振り回しているだけなので、その姿は明らかに子供が木枝を振り回しているだけなのだが。

 少し前に「自警団の人に剣の振り方を教わらないの?」と聞いたら、「僕がそんな事を頼んでも、きっと笑われるだけさ」と不貞腐れながら言い放った。ユーリはふくれっ面すら可愛い。


「じゃあ、ご両親は冒険者にさせる気が全くないのね」

「……いや、父さんからは『まずは体力をつける為に毎日走り込みをしてみろ。お前の本気度を見せつけてみろ』って言われてる」

「へぇ、じゃあ今は走り込みもしてるの?」

「……してない。だって、僕は僕の道を歩む為に冒険者になるのに、その為に父親の言いなりになるのって何か違うじゃないか!」


 ――あぁ、これは!


 そう、これは『反射的に親に反抗してしまい、自分で自分を縛ってしまう』という、ある時期特有の症状……反抗期!

 あぁ、なんて可愛らしいのだろう。あまりの青さに胸がキュンキュンしてしまう!

 

 カイなんていつも悟ったような顔で溜め息ばかり吐いているし、普段の言動が子供らしくない。

 お母さんにその事を言ったら「あの子をそういう風にしたのは貴女だって自覚はないの?」と言われたのだが、未だにそれがどういう意味なのかさっぱり分からない。


「痛っ!」

「どうしたの!? ……あぁ、木枝のささくれが刺さってしまったのね。これはいけないわ」


 私はユーリの手に刺さった小さな棘を抜いて、他に怪我は無いかと丁寧に調べる。ユーリの手は柔らかくて綺麗な手だった。私の手なんて、最近の訓練によって拳や掌の皮が硬くなってきてしまっているので少し羨ましい。


「今日の訓練はこれで終わった方が良さそうね。この木枝はこのままだと危ないから、私が綺麗に形を整えて握りやすくしておくわ」

「いつもありがとう、ラナ」

「いいえ、これも妻の……じゃなかった、幼馴染のつとめですもの」


 そう言って持ち帰った木枝は、ナイフで持ち手の形を整え、その上から包帯を巻いて手に負担が掛からないようにした。

 それを見ていたカイが「姉さんが構い過ぎると、ユーリさんはどんどん駄目になっていきそうだ」と呟いていたが、そんな訳がない。


 ――夫を応援し、支え助けるのが私の目指す妻の道!!

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