第58話 勇者SIDE カイト最後の瞬間


「貴様が勇者カイトだな!」


「そうだ……」


とうとうこの時が来たか……


見た瞬間から、相手の強さが良く解る。


今の俺じゃ到底かなわない相手、高位魔族だ。


「お前、俺が怖くないのか? 俺の名はダグラム6大将軍が1人暗黒騎士……」


将軍!? 騎士……


「それで、お前は将軍なのか? 騎士なのか? どちらが地位なんだ」


「地位は将軍だ……」


「そうか……」


魔族って怖いな……こんな奴があと5人。


そしてそれを超える魔王が居る。


三人と別れて良かった。


四人掛りでも死ぬ運命しか見えない。


『俺1人で良かった』


「どうした、目なんか瞑って……」


「いや、ダグラス……俺はこの一撃に全てを掛ける! だからお前も最強の一撃を出して来い」


これで良い。


「解った約束しよう」


掛かったな。


「それじゃ行くぞーーっ! これが勇者最強の奥義――」


「ダーククイックソードーー」


俺が剣を抜くより早くダグラスの剣が俺の首に届いた。


胴体と首が離れていく……


俺の勝ちだ。


俺は奥義なんて使えない。


あれは只のはったりだ。


もう死ぬしかない人生だが、自殺はマリア達に迷惑をかけるから出来ない。


だから、楽に死ぬ事ばかり考えていた。


こいつに会う前にもヤバい奴にあった。


残酷な性格な奴で、どうにか勝ったが、負けたら地獄が待っていたかも知れない。


『此奴は強い』


此奴の最大の一撃なら、きっと楽に死ねる。


「口ほどにも無い奴め」


違うぞ……俺はお前を自殺の道具に使ったんだ。


これで、魔族の幹部と勇敢に戦った勇者として名前が残る。


そして……この死に方ならマリア達にはきっとお咎めは無い。


お前と戦い死ぬ事で『俺は名誉も仲間も守った』


そして楽に死ねる、死まで手に入れた。


この勝負……本当の勝者はこの俺だ。


「……」


言葉は出ない……だが、この勝負俺の勝ちだ。


そして……楽に殺してくれてありがとう……礼を言ってやる。


◆◆◆


カイトの首は何も話さない。


だが、その表情に苦痛は無く、笑っている様に見えたという。




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