第51話 勇者カイトSIDE 犠牲①


まさか、両方とも居たのか。


深く潜っていくと……オークキング、オークジェネラルが居た。


しかもそれだけじゃない。


オークナイトまでいやがる。


まるでオークの王国みたいだ。


途中から隠密行動をとっていたから、相手は気がついていない。


俺達か気がつかれないようにヒソヒソ声で話す。


『どうする? 引くかやるか? これは危ない話だ。皆の意見を聞きたい』


『これを野放しにしたら、大変な事になるわ。 やらない選択は無いわ』


『そうだね、これは野放しに出来ないね』


『正直、怖い……だけど逃げる選択は無いよ』


正直に言えば体が震えている。


俺が死ぬ分には構わない。


だが、俺のパーティは俺を除き女だ。


死より辛い事が負ければ待っている。


実際に前にゴブリンに遅れをとって危なかった事がある。


だが……それでも俺達は勇者パーティだ。


ヤルしかない。


仲間が腹を括った。


それならば、俺が臆病になっている場合じゃない。


俺は……勇気ある者。


勇者なのだから!


『リタ、今回はリアとマリアを守っていてくれ』


『リアは後方支援で攻撃魔法』


『マリアは待機、もし誰かが負傷したら回復にまわってくれ! 俺が突っ込むから!』


俺は剣を構えそのままオークの群れに突っ込んでいった。


「キサマドコカラアラワレタ、コロセ」


オークキングが俺に気がついて命令を下してきた。


「フッ、ニンゲンガ、コノニンズウニカテルトオモッテイルノカ」


オークジェネラルが高笑いしているのが解る。


「ワタシガキリステテヤロウ」


オークナイトが自信満々に俺を斬ると言ってきた。


確かに女三人を含む四人パーティだから甘く見たんだな。


だが、俺は勇者だ!


冒険者じゃない。


オークを前にしたからか、心がたかぶった。


目の前のオークを斬り伏せ、すぐに次のオークに向かう。


俺がオークを斬っている間にも、後ろからファイヤーボールが飛んでいき、近くのオークが燃えていく。


ほぼ固定砲台となったリア、それを守るリタ。


この布陣は鉄壁で崩せない。


自分でも驚くほどに体が動く。


オークを数体斬り殺した先に、そいつが居た。


「オレハオークノキシ……ジンジョウニショウブダ」


「これほどの人数相手に戦って居るのに今更だ! オークは只の害獣だ!」


「ソウカ……ナラバシネ」


だが、今の俺にはオークナイトの剣ですら、ゆっくりに見えた。


オークナイトの剣を弾き、そのまま首を斬りに行く。


「ギャァァァァーーッ」


断末魔の声をあげてオークナイトの首を斬り落とした。


その間も、俺の後ろからはファイヤーボールがオークの群れに降り注ぐ。


オークは瞬く間に数を減らしていき、オークキングとオークジェネラル……その周辺のオーク以外既に死んでいた。


「ハァハァ、残りはお前達だけだ……」


「フッハハハハハ」


オークキングが笑った気がした。


「……?」


「コレデモオマエハキレルノカ……デキナイダロウ」


残ったオークたちは、裸の女を大きな木の盾に括りつけていた。


「なっ……」


そうか、オークは人間の女を苗床にしている。


それを使ってきたのか……


ヤバいな、リアが動揺してファイヤーボールを止めている。


まだまだ沢山のオークが居る。


リタも動揺している。


「助けて……助けて……」


「いやぁぁぁぁーー助けて」


苗床になっていたせいか、女は皆壊れているようだ。


不味いな。


後方で戦っている俺の仲間は『女』だ。


「グハハハハッ……ケンヤツエヲステロ、コノジョウタイデタタカエマエ」


ヤバいな。


このままじゃ、リタが剣を捨てようとしている。


「ごめんね……助けてあげれなくて」


心から女に謝った。


此処で俺が剣を捨てても、彼女達は助からない。


ただ、俺の幼馴染三人が苗床になり、俺が死ぬだけだ。


勘違いしちゃいけない。


「豚野郎! 地獄に落としてやる!」


そう叫び、盾をよけながら斬った。


だが、オークは狡猾だった。


俺の太刀筋に盾を持ってくる。


「そんな……ぐふっ……」


そのまま斬るしかない。


間違っちゃいけない。


これしか方法が無いんだ。


「キサマタチハ、オナジニンゲンヲギセイニスルノカ」


俺に対して、女の盾が意味をなさないと解るとオークたちは盾を手放した。


人一人縛り付けた盾は重いのだろう。


「此処までの事をしたんだ……お前等は絶対に許さない! 全員皆殺しだーー」


◆◆◆


「ハァハァ、ゼイゼイ」


オークジェネラルやオークキングも含み。


全員を斬り殺した。


一人目の女性を斬った時にオークたちは女を括りつけた盾を投げ捨てたから……犠牲者は1人だけですんだ。


「ゴメン」


斬り捨てた女の子1人の死体に手を合わせた。


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