第48話 変わるリア


最後はリアだ。


リアは良くいえば天真爛漫。


悪くいえば、甘ったれで我儘だ。


そして……流されやすい。


他の三人とは流石に違う気が……


「ファイヤーボール」


近くの森で、ひたすらファイヤーボールを撃っていた。


此処暫く、こんな姿を見ていなかった。


いや、勇者パーティを組んでから、修行をしっかりしている場面なんて見た事は無かった。


これが、本当にリアなのか?


森の中を走り回りひたすらファィヤーボールを撃っていた。


「ハァハァ、ファイヤーボール」


恐らくまだ呪文は一つしか使えないのかも知れない。


だが、こうやって動き回り魔法を使っていれば、体力や魔力がつく。


地味だけど良い練習だし、基本と言えば基本だ。


本来当たり前の事だが、リアが行っているのを見るのは新鮮だ。


「ファイヤーボール……あれ、リヒト……どうかしたの?」


「いや、ただ様子を見に来ただけだから……」


「そう、それなら休憩しようかな?」


「皆もそうだけど、随分頑張っているね」


「直接被害にあっている人を見るとね、少しでも頑張らなくちゃと思うんだ。皆もそうだけど、あの日にリヒトに言われた『勇者の旅は救世の旅。人々を救う旅でもあるんだ。その旅の中でオークやオーガ等に襲われている村や町を救う。助けてあげれば『勇者様ありがとう』となる。その反面、今みたいにサボっていると、村や町が滅んで『なんで勇者様来てくれなかったの』と生き残った人に一生恨まれる。そのうち、歩くだけで石をぶつけられるようになる事すらある。それが嫌なら『死ぬ程努力する。それだけだ』って奴。あれが後になって心に響いたんだよ。実際に数人だけど、魔族の被害にあった人を見ちゃうと『やらなくちゃ』そう思ったんだよ!』


やはり女神が選んだだけの事はある。


根底の部分は四人とも腐ってなかったんだな。


「そうか……」


「今更だけどね。 あと言っておくけど、前みたいに爛れた生活は今は送ってないよ? 馬鹿みたいに、暇さえあればやりっぱなしなんてしていないからね。いつ、遊びに来ても大丈夫だから」


以前は尋ねるといつも、行為の跡だったもんな。


「随分、生々しいはなしだな」


「いや……私だって恥ずかしいけど、散々みっともない所見られちゃったから、弁明位はしておこうと思って……」


「まぁ解ったよ」


もう爛れた生活送って無いのか。


随分と成長した気がする。


もしかしたら、勇者パーティって強くなるだけじゃなく、性格も変わっていくのか?


そう思えてならない。


しかし、四人とも良く変わった。


まさか、リアがこんな短期間でこんなに変わるなんて思わなかったな。


◆◆◆


暫く話していると、リアの顔が今迄以上に真剣な顔のなった。


「それで、リヒトはどの位まで私達のサポートが出来るの?」


まさかリアから聞かれると思わなかった。


「そろそろ、限界に近い……」



今現在、この近くに居る魔物はオーガ。


冒険者が普通に対処できるギリギリの魔物だ。


それは俺も同じだ。


「そうだよね……そろそろお別れが近いよね」


「ゴメンな……俺は四職じゃないから、オーガを狩るのが限界なんだ。それに何処からも支援が貰えないから、金銭的な事もある。恐らくあと、村を二つ越えた次の街辺り……城塞都市ギルメド辺りで離れる事になると思う」


「そうだよね、あそこが人間が普通に暮らせるギリギリの街。そこから先は魔物どころか魔族すら頻繁に現れる場所だからね」


大体、ギルメドの街ですら、大きな城塞を築いて魔族や魔物を防いでいるんだ。


以前のカイト達なら、もっと手前で終わらせるつもりだったけど、ギリギリまではついて行く気になったんだ。


だが、どう考えても『そこが限界』それ以上は無理だ。


「まぁ、俺はただの人間だからな。どんなに鍛えても其処から先へはいけないよ」


「そうよね、わかったわ……そうすると、事務や手配も其処から先は自分でしないとならないのね」


「そうだな……すまないね」


「良いのよ、確かに、その通りだね……悪いけど、どうしたらよいか教えて頂戴ね」


悪いけど……随分変わったな。


「了解」


修行の邪魔をしちゃ悪いのから俺はその場をあとにした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る