第34話 恥ずかしいけど必要な事。


「へ~カイト達まだ立ち直らないんだぁ~」


「まぁ、部屋でやる事やっているだけで、まだ戦わないんだよね」


俺は今、自分の部屋でレイラにカイト達勇者パーティについて相談している。


レイラはベッドで胡坐をかきながら話を聞いてくれていた。


『手はある』ゼウスさんから、心が折れた者を戦わせる方法なら聞いた。


ただ、それはまだ、使いたくない。


「そうね! 彼等は勇者パーティでしょう? それならこの辺で荒療治が必要かもね!? かなりきつい方法だけど効果的な方法ならあるよ! 但し、恨まれる可能性もあるけど? 私がやろうか?」


レイラから話を聞いたけど……これは思った以上に過酷だな。


まぁ、ヤルしかなさそうだ。


「良いよ! そう言う事はレイラにはやらしたくないから俺がやるから」


「そんな事して大丈夫なの?」


「大丈夫じゃないわ! だけど、これ大昔には普通にやっていた修行法なのよ……まぁ、危ないし非人道的だから今は禁止されているんだけどね」


「それで、まさかレイラは経験があるの?」


「ないわよ! わたし努力家だからね、そんな危なくて惨めな事はしたくなかったから、頑張ったわ」


「そう……」


「それにこれは勇者パーティだからね、相手が普通の人間なら絶対にしてはいけないわ」


まぁ、ヤルしかないな。



◆◆◆


この宿屋に来るのももう何度目になるのかな……


個人的には『事務的な仕事をするだけ』そう考えていたんだけど……はぁ~本当に面倒くさいな。


「カイト達居る?」


宿屋の受付のお姉さんは無言で上を指さした。


「ありがとう」


お姉さんの顔が引きつっている。


多分、相手が勇者パーティじゃ無ければ叩き出したいのだろう。


朝っぱらアンアン煩いから近くの部屋は貸しにくいだろうし、シーツは色々な物がついてベチャベチャ。


こんな嫌な客は他には居ないよな。


トントントン


「入るぞ!」


もう一人部屋をノックするのは辞めた。


どうせ三人部屋にしか居ないんだから、最初からこっちをノックすれば良い。


「おっ……おう」


「あっ、また来たの」


「なんかよう?」


「……」


「あのさぁ、幾らなんでももう気持ちを切り替えて討伐しないか? 流石に心の傷も癒えたよな?」


「あのなぁ……俺は大丈夫だが、他のメンバーがな」


ハァ~まるで冒険者になりたての子供みたいだ。


「いい加減に目を覚ませよ! 冒険者はさぁ、女や酒におぼれて嫌な事は忘れるんだぜ! 仮にも勇者がこれだけ快楽に溺れてまだ立ち直れないのか?」


「それは言い過ぎだわ」


「そうだよ!」


「私たちなりに頑張ったよ」


「あのな、マリア、リタ、リア……冒険者なら良いよ! だが、お前達は勇者パーティだろう? 本来なら腕を失なおうが、失明しようが戦い続けるのがお前等なの……わからないのかよ……」


言いたくないけど、女神はなんで此奴らを四職に選んだんだ。


そこ辺の子供冒険者の方が余程勇気があるよな。


「「「でも……」」」


個人的には此奴ら本当は心の傷は癒えていて、サボり癖がついただけなのかもな。


流石にそう疑いたくなる。


まぁ、良いや。


「それじゃ今日は野営の訓練に行こうか?」


「「「「野営の訓練」」」」


「そうだ、討伐は出来ないかも知れないけど、訓練位は出来るだろう? ほらつき合ってやるから行こうぜ」


まさか、こんな事迄世話しなくちゃならないとは……本当に面倒くさいな此奴ら。


◆◆◆


「近くの森まで来て何をするんだ?」


「今日はテントも何も持ってきてないから、一番単純な訓練一つだけしようと思う」


「簡単な訓練? 一体何をすれば良いんだ?」


「訓練……何をさせる気なの?」


「嫌な予感が僕するんだけど?」


「どうせ碌な事じゃ無いんでしょう……」


これから俺がやらそうとしている事は一見、変態に思えるかも知れないが、これは凄く必要な事だ。


「簡単な事だよ! お前等三人排泄する所をカイトに見て貰え、勿論小さい方だけじゃなくて大きい方もな……終わったら今度はカイトが排泄する所を三人が見るんだ……良いか? 恥ずかしがらずにしっかり見るんだぞ」


「なっ……そんな変態みたいな事出来るか!」


「変態! なにをさせる気なのよ! カイトの前でなんてそんな出来ないわ」


「変態! リヒトの変態――」


「小さい方なら兎も角、大きい方は無理だよ……」


ハァ~もうSEXまでしているんだから、今更だろう。


「あのなぁ…….これから旅をしていくんだろう? 野営の時には『誰かが用を足している時は誰かが見張らない』とならない。 その時に距離を置いていたら、助けに入るのが間に合わない。 『目を離した瞬間に襲われたり殺されたりする』んだ。魔族領に入ってからはそれこそ、目を離したら命取りになる」


「だからって、お前……」


「そうよ、嫌よ……そんなの」


「僕だって嫌だよ」


「私だって」


「俺は離れていて見ないから……とっととヤレよ! ほら、あっちの茂みでお互いに見せ合ってよぉーー悪いが絶対に大きい方もするんだぞ」


「やらないと駄目なのか……」


「「「……」」」


「さっさとやれよ!」


正直ハーレムパーティになって良かったと思う。


男女の仲になって無いのに、これは辛いよな。


ちなみに、俺とレイラはこんな事しない。


だってただの冒険者だから『そんな旅』はしないからな。


流石に魔族領まではついて行かないよ。


気まずそうなカイトと泣きそうな三人はそのまま近くの茂みに消えていった。


◆◆◆


「……行ってきたぞ……」


「うっうっ……酷いよ」


「こんなの見られるなんて……僕……もうお嫁にいけない」


「グスッ、スン……なんでこんな変態みたいな事しないとならないの」


俺は4人を置いて茂みの先に言った。


ははははっ湯気が出た状態でちゃんとあった。


「うんうん、偉い、ちゃんと出来たみたいだな」


「……」


「「「嫌ぁぁぁぁーー」」」


3人してベソかいているけどさぁ……


これが日常的に出来ないと、将来殺されたり、攫われたりするんだ。


傭兵や長期依頼専門の冒険者は皆している事だ。


幼馴染で冒険者になった者で、これが出来なかった為に大切な幼馴染が攫われオークの苗床にされたなんて話もある。


だから必要だ。


「言っておくけど、これは本当に必要だから、常日頃から慣れておくようにね」


「……わかった」


「グスッスン……」


「僕……こんなの嫌だよスン……グスッ」


「私…….こんなの嫌だよ……お尻拭くのまで見られたくないよ……」


泣こうが恥ずかしがろが、必要な事実は変わらない。


「幾ら言っても、これが現実……本当に必要な事だからね。何度も危ない事にあったんだから、必要性は解るだろう…….俺は教えた。どうしてもやりたくないなら別に良いよ。 俺には関係ない。 苗床になってから後悔すればいいさぁ」


3人は泣きそうな顔をしているが……知らないよ。


ハァ~……今度は戦闘か……此処まで面倒くさいとは思わなかったな。



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