第21話 避妊紋と虚偽の申告


「え~と貴方が避妊紋を刻むんですか?」


「そうだけど!?」


今、俺は奴隷商にきている。


奴隷商と言えば奴隷販売ばかり考える者が多いが、奴隷に関わる事全てを行っている。


良く誤解されるが奴隷商人は国から、認可された商売なので決してやましい商売ではない。


避妊紋とは性処理奴隷や娼婦が刻む刺青ににた魔術の紋章で、その名の通り、避妊効果がある。


「ここしばらく、長旅をしなくてはいけなくてね、女性連れだから、お願いしたいんだ」


「なるほど、そういう事なら銀貨3枚になります」


今迄、お金を使わないで貯めていたから、この位のお金なら問題ない。


「それじゃ、お願いします」


色々考えて、俺は見えにくいお尻に刻んで貰う事にした。


この避妊紋、解除したくなったら同じく銀貨3枚払えば解除して貰えるから、凄くお手軽だ。


診察台みたいな小さなベッドに案内され、そこに俺がうつ伏せに寝ると、手際よく奴隷商が刻んでいく。


簡単に紋章は書き終わった。


「終わりました」


「ありがとう」


俺はお礼を言い、代金を支払うと奴隷商を後にした。


◆◆◆


今日はこれからまたカイト達にヒヤリングをしに行かなくてはいけない。


今回の報告は「勇者パーティの現状の報告書」の作成、提出だ。


まだ、この街にきて2週間ちょっと、まぁ余り成果らしい成果は上がってない様な気がする。


何か大きな成果を上げていれば、同じ街なのだから噂位は伝わってくる筈だ。


俺がゴブリン位なら狩れるようになった。


勇者パーティなんだから、もう少し上にいっているだろう。


◆◆◆


カイト達が泊っている宿に訪れた。


いなかったら出直すつもりだったんだが、宿屋の話ではいるそうだ。


俺の事は宿屋は知っているので、そのまま顔パスで


トントントン


「カイトいるか?」


俺が声を掛けると中からガタガタと音がする。


しかも、三人の声も聞こえてくる。


「リヒトか?すぐに出るから、待ってくれ…」


そう言って5分位ドアが開かなかった。


◆◆◆


「待たせたな…リヒト…」


明らかに四人の着衣は乱れていて、どうしたんだ?


リアが隅っこで泣いていた。


「お前、まさか無理やりしたのか!!」


「いや、違う」


「「違うんだ(から)」」


「うっうっーーうわぁぁぁぁーーん」


すぐに、カイトが、ついでマリア、リタがすぐに否定をしてきた。


リアは、大きな声で泣き始めた。


「まさか…三人で無理やり…」


「違うんだ、話を聞いてくれ」


カイトは事情について話し始めた。


「実はな…」


冒険者ギルドで話を聞き、最初はゴブリンからだと教えて貰い、ゴブリンの討伐依頼を受けたそうだ。


「それは普通じゃ無いのか?」


最初はゴブリン。


まぁ普通だ。


「いや、それが」


自分達は勇者パーティだから、ゴブリン相手なら無双できる。


そう思って四人でゴブリンの棲む洞窟。通称ゴブリン砦の攻略に挑んだそうだ。


大体、話が読めてきたな。


「まさか…」


ゴブリン被害にあったのか?


「いや、最初は余裕だと思っていたんだよ! ゴブリンなんて一撃で死んでいくからな…」


流石、四職(勇者、聖女、賢者、剣聖)凄いな。


最初から強いんだな。


だが、おかしな事に顔が青い。


「さすが、勇者凄いね…」


「いや、それが…」


入口付近で戦っていれば良かったのだが、そのまま余裕で戦える。


そう思ったカイト達はそのまま洞窟の奥に進んでいった。


そこには上位種のゴブリンナイトやゴブリンアーチャー、更に上位種がいて、フルボッコにされた。


「よく、それで助かったな!」


「運が良かったとしか思えない。俺は組み伏せられて肩と太腿を刺されて死ぬかと思ったよ…ただ、それより大変だったのが…」


「まさか…」


リアが泣いている。


という事は、凌辱でもされたのか。


そういう事か。


「いや、最後の一線は大丈夫だ。ゴブリンハンターという大きなパーティが運よく駆けつけてくれて助けて貰えた。だが、その時の三人は服を引き千切られていて、組み伏せられていてな。マリアとリタは良いんだが、リアは時折、泣くようになってしまったんだ」


レイラの言う通りだった。


「そうか。それで?」


「他の二人も、良く体を震わせていて、だから一緒に寝るようになったんだ」


確かに事情はわかる。


四職とはいえ、今迄殆ど討伐の経験のない、此奴らなら充分ありえる。


だが、おかしい。


恐怖から肩を寄せ合って寝ていた、それならわかる。


だが、ゴブリンに襲われた女性が、性的な事をしようとするだろうか?


俺が子供の頃、見たゴブリンに襲われた村娘は男を見ただけで震えた。


鎌をかけてみるか。


「それで、その話は何処までが本当?半分以上嘘でしょう?」


「リヒト、俺が嘘を言っているって言うのか!」


「あのさぁ、そんなの誰でもわかる。ゴブリンに服を切裂かれてどうして三人に傷がないんだ? ゴブリンは爪で無理やり服を剥がすんだ。そんな綺麗な状態に女がいるわけがない」


「「「「ああっ」」」」


ああじゃ無いよ。


「あのさぁ、俺は書類を皆から聞いて書かなくちゃいけないんだ。嘘はやめてくれ!いいか、もし今の言い訳を俺が聞いて鵜呑みにして報告書に書いたら、三人とも傷物の可能性ありと判断され…もう貴族からの婚姻はなくなるぞ」


「「「えっ」」」


「だってそうだろう? ゴブリンに裸にされ、最後までやられてないんなんてどうやって証明するんだ? ふつうはヤラレタそういう風に判断されるぞ! それで、何処まで本当なんだ!」


「「「「実は…」」」」


結局、ゴブリンに苦戦していた所をゴブリンハンターに助けて貰った。


彼女達三人は被害にあってない。


どうやらとっさに考えた言い訳のようだ。


「あのさぁ、もういい加減にハーレムパーティ登録にしておけ。その方が絶対に良い」


流石にこんな事ばかりしていたら、宿屋は気がついているだろう。


「いや、折角のチャンスを俺は棒に振りたくない」


「私も同じだよ」


「私も」


「あははっまだ大丈夫だよね」


どうすればいい。


「もう、その件には俺は関与しない! ばれた時に困るのは俺じゃないからな。ただ、早いうちにハーレムパーティにした方が個人的に良いとおもう。あと、今後の事を考えたら、もっと頑張った方が良いと思うよ。まぁ自分の人生だから、自分達の好きな様に、それじゃ今回のヒヤリングはこれで良いや…またな」


「ああっ、またな」


「またな」


「またね」


「また」


多分、支援は減ると思うな。


嘘はつけないから、報告書には


「リヒト達勇者パーティはゴブリンに敗北して、冒険者に助けられ。引き篭もり中」


こう書かなくちゃならない。


男女間の事は書かないでおくけど。


ちゃんと頑張らないと、折角の勇者パーティという切符がの価値がなくなるぞ。



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