第10話 旅立ち
「それで、良くあたいのツケを含む金を払えたな…リヒトも金なんて無いだろう?」
「それは体で返す約束でどうにかしました」
「体で…まさか?」
顔を赤くしているから絶対に変な事考えていそうだな。
「いやレイラ姉さんの思うような事じゃ無くて、カイト達勇者パーティの手伝いをする約束で貰い受けたんだ…」
「成程、それじゃ仕方ねーな! あたいも一緒に戦ってやる」
そんな物騒な事…俺はしない。
大体、凄腕の冒険者ゼウスのおじさんも言っていたもの。
『強い物と戦わない』のが冒険者。
充分な安全領域を保ち、自分が絶対に失敗しない所で戦う。
そうしない奴は死んでいくって。
「いや、一緒には戦わないよ、俺はただ旅のサポートをするだけ、まぁ野営の時の見張りはするかも知れないけど、それ以上は関わらない!」
「あのさ、カイト達は幼馴染で友達じゃないのか?」
「友達で幼馴染だけど…親友じゃないから、利害関係でしか考える必要ないよ」
「どういう事?」
「だって、友達だって言っても人生の中で子供の時に少し遊んだだけ…レイラ姉さんが知っての通り俺は大人に混じって仕事ばかりしていたから、そこ迄親しくないよ」
「まぁ、言われてみればそんな気がするよ」
「でしょう?貸し借りも友情も無い、ただ子供の頃遊んだ顔見知り相手に命まで賭けられない、だから魔国までお世話をして、そこでお別れ!それだけの事です」
「随分とまぁ、ドライだな!」
「ある意味、俺の仲が良いのはレイラ姉さん…他は冒険者のゼウスさん、ついで、一緒に働いて居た大人の村の人…ほら、全然仲良く無さそうじゃない?」
「ありゃ…そうだなリヒトが遊んでいるのは…うん見た事が無い」
「でしょう? だからレイラ姉さんが絡んで無ければ1人で旅立ってどこかの街で冒険者として暮らす、そんな人生ですよ」
「あっなんだか、ゴメン」
「まぁ、気を取り直して…という訳で暫くしたら一緒に旅立ってねお願い」
「まぁ、あたいは奴隷だから構わないけど? あたいは一体何をすれば良いんだ!」
「まずは、俺とパーティを組んで、ゴブリンやオークの討伐…まぁまずはそれ位かな、ゆくゆくは嫁さんに…」
「あはははっブレないね…まぁ良いや、一緒にパーティを組んで一緒に討伐…それで良いんだ…良いよ」
「それじゃ頼んだよ!」
「解ったよ」
これで話は纏まった。
◆◆◆
俺はもうこの村に戻って来ることはない。
田畑を手放して…家を中身ごと買い取って貰う。
これでもう此処での日々は終わりだ。
カイト達勇者パーティを送っていくなか、住みやすい場所を見つけそこに住めば良い。
◆◆◆
「それじゃ、カイトまずは何処に向かうんだ?」
「そうだな、まずは隣町に行って装備を整え、少し弱い魔物を討伐しようと思う」
「解った、それじゃ俺は先に隣町に行って拠点となる宿屋他の手配をしておくから2日間程後にきてくれ」
「なんだ、一緒に行かないのか?」
「ああっ、先に出て、街を調べて色々と手配した方が多分旅は快適だぞ」
「そう言う物か?」
「そういうもんだ…それじゃ、あと、パーティをどうするか決まったか?通常パーティかハーレムパーティか?」
「それが…まだな…」
「そうだな、街に行くまでには決めておくよ」
「こればかりは早く決めて置いて貰わないと困るからな…それじゃ俺達は今日にでも旅立つから、2日後に隣町の冒険者ギルドにお昼過ぎに来てくれ」
「解ったよ、皆で行く」
「それじゃ、待っているからな」
こうして勇者パーティに先んじて俺達は旅に出る事にした。
◆◆◆
「あたいの方も整理は済んだよ…とは言っても家はとうに借金の方に入っていたから身一つだけど…」
「それじゃ行こうか」
「ああっ」
こうして俺達は村を離れた。
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