第4話  あと少し足りない 



「うわぁぁぁぁぁーーっ、あたい…やっちまったのか!」


「う~ん、レイラ姉さんおはよう…昨日は随分とお楽しみだったね」


「あの…あたい、まさかリヒトとやっちまったのか…そのゴメン…」


本当は何もしていない。


だが、あそこ迄ベロンベロンに酔っていれば記憶だって曖昧な筈だ。


「そうだね、レイラ姉さん…」


レイラ姉さんは自分のホットパンツを見つめている。


「下半身に違和感が無い…リヒト…お前、私を騙したなぁぁぁーー」


「あははっ、そんな記憶がなくなるまで飲むレイラ姉さんが悪いんだよ!」


レイラ姉さんは恐らく男女経験が無いだろうから、すぐに気がつくよな。


元からばらす気だったけどね。


「まぁ、飲んだくれていた、あたいが悪いんだけど?冗談キツイよ!それで、なんでこんないたずらをしたんだよ?!」


「それは前から言っているだろう?俺はレイラ姉さんが好きなんだよ…」


「あのな…あたいの歳は27歳だぞ!どう考えてもリヒトの歳より、もし生きていたらお前の母さんのリオナさんの方が近いんだぞ! それに血縁者じゃねーけど、リオナさんはあたいにとっては姉さんみたいな人だったんだ…悪い、あたいの中じゃリヒトは可愛い甥っ子みたいなもんなんだよ…」


「レイラ姉さんはそう言うかも知れないけど、俺は年上が本当に好きなんだよ!小さい頃から大人と過ごしていたから大人の女性が好きなんだよ…その中でもレイラ姉さんが一番好きなんだ、仕方ないだろう?」


「難儀だね!私の事は置いておいて知っているよ!『ババコンリヒト』なんてあだ名がつく位だもんね!だけど、それって多分本当の愛じゃないと思う…う~ん、愛は愛なんだろうけど!男女の恋愛じゃなくて…そう、親子の愛じゃないのかな?リヒトは小さい頃に母親を失ったから…そうだよ…うん、母親みたいな女性を求めているそれだけだよ」


「あのさぁ、レイラ姉さん、それって問題なの?否定はしないけど?『母親みたいに包容力がある女性が好き』そういう男性は少なからず、いると思うし、レイラ姉さんは叔母さんでも本当の姉さんでも無く、血縁者じゃない!法律や決まり、常識に関しては問題はないと思うんだけど…」


「そりゃそうだけど…あたいにだって矜持はある…幾ら男日照りだからって、親友で姉みたいに思っていたリオナさんの息子に手なんて出せる訳ないだろう!」


ハァ~本当にこう言う所が…


まぁ、こういう真面目な所も好きなんだ。


仕方ないな…


「他ならぬ俺が良いって言っているんだから良いんじゃないかな…本当に頑固なんだから…」


「あのさぁ…リヒト、なんであたい、なんだよ! リヒトは若いし村の人気者なんだから、他に幾らでも相手はいるだろう?幼馴染の3人はカイトに取られたのかも知れないが、隣村まで足を延ばせば、他に相手はいるし、それこそ街に出て冒険者になればリヒトなら幾らでも相手はできるだろう、結構カッコ良いし…」


「そう?それなら、そんな若くてカッコ良いリヒトくんに好かれているレイラ姉さんはラッキーですね!それじゃ…」


「あのな…」


「大体、レイラ姉さんも良く男日照りで『男が欲しい』って言っているんだから、俺で手を打てば良いじゃ無いですか?どうですか?レイラ姉さんがその気になれば、この若くてピチピチした体が今夜でもレイラ姉さんの物ですよ! さぁこの際照れずに告白しちゃいましょう…さぁ」


「(ゴクリ)あのさぁ…リヒト自分をもう少し大切にした方が良いよ…」


ちっ、いま生唾を飲んだよな…でもまだ駄目か。


「そう…残念、これから村長に会わないといけないから、一回出て来るけど、また、今夜来るか…それじゃぁね」


「あの、リヒト…」


好かれている自信はあるんだけど、あと一推し足りないんだよな。





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