切りさく刃
「え、ちょっと、あの、この格好じゃ、その……」
「その格好を見せにきたんだよ。
「この格好で! このような、短いスカートや透ける素材の服で踊れとおっしゃるのですか!?」
恥ずかしさからか、フィーネが声を荒らげる。インカーが責められるのを見てライサが口を挟んだ。
「あのナァ
ライサはかなり
「ライサ、お前ひとこと多い」
「んだよ、俺なりに言葉に気をつけて
「じゃなくて、最初から言わない方がいいっつってんの」
「おー怖い怖い、鬼ババのお
ライサは耳を
「悪いね、あいつ的には悪気はないんだが……うちのペットの
「ペットって……ライサ
レオンはこっそりつぶやいた。インカーの中ではライサが彼女と同い年だということがまるきり抜けおちているようだ。
「ああそうだ、インカーさん。水の神様の
「そうかい? でもねー、私の食い
あわててセルシアが何か言おうとしたその時、
「ほーら、俺の出番だー! いつも迷惑かけてる俺に恩返しのチャンス!」
上方から声がして、四人はそちらを振りあおぐ。いつのまに移動したのか、インカーの背後の屋根にライサが
「ガキの手を
「でも実は俺の方が
「その金は全部
「ちょっとムズムズするのさえ
「じゃあお前の未来のために取っとくんだな。早く安定した職について屋根モンから足洗えるように」
「そんなの一月後からはじめても大丈夫だって!」
「あーもう! そんなに金余ってんなら自分の家建てろってんだ!」
「だって屋上人って気楽でいいんだも〜ん」
「お前はいいかもしれないけどなぁ、私は……」
ヒートアップしていたインカーは、ハッとして口を
「あ、いや……今のは」
ライサの目は
「そう、なのか。俺やっぱ
「違う、そういうつもりじゃないって……」
「いやもういい。もう遅いっての! 本音はそれだよ、分かっちまったよ」
全然遅くない、今すぐ引きとめてくれといった
「……もういいんなら、早く出てけよ。私もな、ずっと今の状態はライサの将来にとってよくないと思ってたんだ。ちょうどいい機会だ、独りだちするための、な……お前もそろそろ足を洗うべきだよ。ガキだからって許される歳でもなくなってきてる。今が働きざかりの入り口なんだ。
私はお前に、地下の地下のゴロツキどもといっしょの無意味な奴にはなってほしくない。だから、自立しろ。自分の家を持って、一人で生きて、家庭を持って、一人前の男になれよ。そしたら恩がえしも受けてやる」
ライサは自分の耳が信じられないかのように両耳を
「……まるでよォ……ごりっぱな親御さんのような言い
彼は
「んだァ? その目は。私はお前のためを思って……ってヤツか?
俺ァ十八だ!
……あァ? もしかして俺が傷ついてたことさえ知らなかったか!? そうだよな、俺の気持ちなんか
そこでライサは言葉を切り、頬に流れたものを
インカーは呆然と立ちつくしたまま、身じろぎもしなかった。短剣は彼女の左腕を切りさき、床に突き刺さった。一テンポ遅れて血が噴きだす。
「いいか
レオンは言われたとおりに短剣を引きぬき、投げるのをためらった。
「やっぱだめだ。人を憎むもんじゃない。好きな人なら
「うるせー、新参者が口出しできるような簡単な話じゃねェんだよ。いいからさっさと
するとインカーが無言でレオンから短剣を奪い、右手でライサに放りなげた。ライサはそれを器用に受けとると、フンと鼻を鳴らしてインカーの家の屋根から飛びおりた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます