気を取りなおし
戦場に向かう道ゆきの上では、さすがに誰も今朝までの
「そろそろお互いに何ができるか、共有しておいた方がいいと思います」
セルシアの
「じゃー俺からー。俺は雷の剣プラズマイドの主だ。プラズマイドは剣としては
クリスがそう言ってプラズマイドの柄の真ん中を
「知らんかった、なにそれかっけぇ……」
「ふふーいいだろー。ま、あと、俺の剣の腕は悪くない。それに、俺の持ってる技術でブーストというのがあって、やろうと思えば雷みたいに素早く動けるし、筋力も強くなる。長時間使える
「ブースト技術は私達に分けられないの?」
「うーん、インプラントをかなり仕込まないといけないから、俺の世界に戻るならともかく、旅の途中では無理だなー。あ、仕込みで思いだした……。
はい、フィーネちゃん、このお薬を飲んでほしい。ああいや、怪しいものじゃない。これには翻訳モジュールと医療モジュール、魔力補助モジュールが入ってるんだよ、セルシアさんやレオン君、サンリアちゃんももう取りこんでるやつだ。これさえあれば誰とでも翻訳不要で話ができるし、雷の剣の有効範囲内なら死の剣で斬られるか自分で傷つけたいと思った傷以外はぜんぶ治る。魔力補助モジュールは僕の世界の長にもらったやつで、
「クリスさんってなんだかすごいですね……? 分かりました」
フィーネが
「特に違和感なかったら良し。もし気分が悪くなったらすぐに言ってね。僕もいちおう一級技術士の端くれだから、こんなところでも
「クリス君、戻ってきて」
セルシアが溜息混じりにクリスの耳を引っぱる。
「……はっ! しまった。オートでしゃべらせてた。ごめんごめん」
「え? なんですか……?」
「あー……えっとねー、今俺の中にもう一人、別の人間がいる感じになってるんだ。ナノマシン技術はそいつの領分なんだよ。俺の意識が
「それってリノのことか?」
「まあうん、そう。あいつのシュミ悪い
『うそつき。僕のことを忘れたら終わるプログラムだって伝えただろ』
(うるせー、無理だろそんなの)
クリスは顔をゆがませて
「やっかいな女に
「うふふ、やっかいな女の呪い……言いえて
おう、プラズマイドの能力はナノマシンを動かすだけじゃない。むしろメインはその圧倒的火力!
プラズマイドから雷を出すこともできるし、プラズマイドで雲から落ちる雷をあやつることもできる。雷のエネルギーを貯めておくこともできるらしくて、今はかなりチャージされてるけど、これが切れたら俺の魔力から雷分のエネルギーが持っていかれることになるから注意しないとかなー。
それと、電流から
レオンはクリスの説明を聞きながら、さっぱり分かんねえな……と少し眉を寄せた。
(ジバ? つよそー……いや、
「あーそういや、電気でできることっていったら、火も起こせるんだっけか」
「うん、できなくはない。お前の光の剣と効率は同じだけどな。
それより帯電させて引力や
あとは電気分解とかだけど、このへんになってくると制御も難しいわりに大したことできないから覚えとかなくていいと思う。他に質問あるかなー?」
クリスが一同を見回す。レオンは何から聞けばいいのか分からず沈黙を選んだ。サンリアが手を挙げる。
「雷をあやつる時は雲がないといけないのかしら?」
「雷雲があるとベストだね! フィーネちゃんとサンリアちゃんの協力があれば、晴天でも雷雲を作れるとは思うよー」
「雷雲ってどう協力すればいいんでしょう?」
「フィーネちゃんが
「ちょっとやってみましょうか……」
「いや、私達が水の上にいる状態でやるのはやめましょ? 戦いは四日後なんだから、街に着いてからが安全だと思うわ」
「そうだね、いろいろ実験する時間があってよかったよー。それじゃ次はフィーネちゃんかな」
クリスの難しい説明が終わったか。要は雷が出せて、できれば雷雲があると楽、ってことだろう。……それだけ分かっていれば十分のはずだ。レオンは気を取りなおしてフィーネの方を向いた。
「はい、私は水の剣アクアレイムで水をあやつることができます。アクアレイムはふだん実体を持たない剣です。私の魔力で刀身を作りますので、サイズはいろいろ変えられるんですが、重いのは苦手なのでだいたい
水のないところに水を
それから、相手に私の手か剣が当たりさえすれば、血液なんかの体内の水分をあやつることができます。もう、めちゃくちゃにできちゃいます」
フィーネがにっこりと笑い、場は一瞬フリーズした。
「……あ、でもそれいいわね。私もやってみようかしら……人間風船」
サンリアがなにやら恐ろしいことをつぶやく。
「サンリアさんはどういう魔法が使えるんですか?」
「それじゃ、私の番にするわね。私の剣はウィングレアス、風の剣。これね。この
だから、生きもの相手に一番てっとりばやいのは
それから、空気の圧力を高めて
あとは、竜巻、それから雲ね。やったことはないけどできると思う。エネルギーを貯めておける機構はついてないから、大規模なのはもしかしたら途中で息切れするかもしれないけど……。そこは試してみるしかないかなぁ。前にレオンと二人で飛んだ時は、一時間弱くらいもったわ。だから環境次第ではあるけど、戦力には数えておいてくれていいと思う」
あの、
「はーい質問ー。規模によって疲れ方は変わるのかなー?」
「そうねぇ、多分動かす空気の量で変わるんじゃないかな。窒息が一番って言ったのもそこ。呼吸に使う空気なんてほんの少しだけだから」
「なるほどねー! いやー面白いなぁ、道理で夜営に虫が出ないはずだ。ほんのちょっぴりの
クリスが感心してうなずく。レオンはいつの間にか
「んーと。つまり、クリスが雷出せて、ジバ出せて、雷雲があるといいなってとこか。フィーネは水で押しながすのと、ランザー改を作れる。人間の体も
「磁場出せるって、お前……」
「まあ、レオンの理解はそれで良いわよ……」
なぜかクリスとサンリアにまで呆れられて、レオンはしょっぱい顔になった。
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