挿話〜竜に乗るということ〜
プラチナブロンドの長髪の男が、友人を探し寄宿舎から出てきた。髪を雑に左胸でたばねる。今は亡き姉のまねごとだった。
恐らくあいつは今も、騎竜舎に詰めているのだろう。竜の手入れなどは従騎士に任せろと言っても、あいつは
騎竜は
彼が騎竜舎の屋根をくぐると、黒髪の男が
「……ディゾールか」
「ああ。ガンホムはあいかわらず耳がいいな」
「ふふ、こんな時間にここに来る騎士は俺かお前くらいのものさ」
「俺はガンホムに用がある時にしか来ないぞ?」
「そうか。じゃ、俺だけだな」
そう言うと
「……そろそろなのか」
「ああ、産まれそうだ。旦那が居なくなるので心細いらしい」
「心配するな、こいつがおっ
ディゾールがそう声を掛けると、
「笑った。元気が出てきたかな」
「え? 今の笑ったの?」
「ちょっとは騎竜の個性も知っておいた方がいいぞ、ディゾール」
たしなめられたが、そもそも常人には竜の鳴き声の聞きわけなど
「ディゾール、お前がなんでここに来たか当ててやろう。我らが団長殿は今度の作戦にかなり緊張しているごようす。まあ無理もないが。今までせいぜい二個中隊(※二百人)だったのが、いきなり二個大隊(※千人規模)ときた。お前は基本的に若いのに弱い。いつもの団長ならともかく、今のあの人は見てられない。だから俺んとこに逃げてきた。俺がいればお前もあの人も落ちつくからな」
「……さぁて、夜の散歩もこれくらいにして帰るか」
「それじゃ、俺も帰るか」
「要らねぇよ、余計なお世話だよ」
「ははは、どうやら図星だったようだ」
笑いながらガンホムが竜の手入れの後片付けをしはじめたので、ディゾールは仕方なく彼を待った。
「……お前が死んだら、って言ったがよ」
「ん?」
「死ぬんじゃないぞ。〈
「……お前。俺にそこまでの価値は無いぞ」
竜盾、とは避けられない攻撃に対し、騎竜を
「俺は目が見えない分、本来なら竜騎士どころか従騎士にすらなれない一兵卒だ。たまたまアズ……現団長殿の配属になったおかげで、腕を磨けて今の地位までこられたが、常に最前線で危険に突っこめない俺など不要だ」
「止めろ、俺はお前の価値はその腕っぷしだけじゃないと知っている。お前は前線を
「まるで自分達は死ぬことはないみたいな言い方だな」
「お前が一番危ないんだからしかたないだろ。見えないってのはハンデではあるもんよ。次は市街地戦だろ? しかも、相手が魔法を使ってくることは確定している。今までのようにはいかない」
「……分かってるさ。でもな、竜に乗る以上、誰だって明日死ぬかもしれない。だが戦力を減らすわけにはいかない。だから、従騎士を育てて、いつでも自分の竜をくれてやれるようにする。そうだろ? ……竜盾だと? 自分の竜を
ガンホムがディゾールに
「……悪かった。戦友をうしないたくない俺の弱さだ。忘れてくれ」
ディゾールが
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