二人を誘う風…肆…
憶測と謎
『まず、床が抜けたのは明らかに
サンリアが入ることまでも予想しておったかもしれん。サンリアがセルシアをともに
「セルシアがうらぎり者だっていうアレか。けっきょくウソだったんだよな?」
『むずかしいところじゃな。あの声の主、メイラエのアニマにとっては、本当のことじゃったのかもしれん。
あれはたしかに、メイラエからセルシアに受けつがれるべきものじゃった。つまり、メイラエのものでもあったということじゃ。正気をうしなっておっては、おのれの剣をうばった者に思えてもおかしくはないのじゃ』
「閉じこめられたって言ってたぞ」
「
しかし問題は、僕が音の剣をとりにいちどあの
『そう。おそらく、アニマの状態で音の剣が持ちさられたことに気づき、自分で迷宮に入った。
アニマに反転していたならば、例の入り方もまちがえたかもしれん。そこを待ちうけていたイグラスのサルレイに、
つまり、音の剣をうばった者とともにいた女に閉じこめられた、じゃな』
「持ちさられた、いや僕が手にいれた時点で、メーおじはもう正気じゃなかった、と……」
『おぬしを宮殿に
セルシアは怒りにくちびるがわなわなと
「……他人の人生を、なんだと思っているんですかね」
『きゃつらの
「思考し行動する自由をうばわれているのか。なげかわしいですね……大義なんて、食えやしないのに」
『その悲運を歌ってやるか? ワシの知る
「もう少し、時間が経つか、せめて正体見たりとなるまでは無理ですね!」
彼はニヤリと笑ったが、両の目は怒りをあらわにしており、その予定はないとなによりも
『……すまぬ、
ああ、ちなみにアニマについてじゃが、メイラエがヨナリアを理想の女の子としてとらえていれば、ああいう名のり方をすることもある。理屈や常識はほぼうしなわれ、感覚が
「男の子を理想の女の子として見るってどういうことよ…どんだけかわいかったのよ」
「今の僕とうりふたつでしたが」
「……ますます混乱するからやめて?」
サンリアはセルシアのノースリーブからむきだしになっている、女性というにはたくましすぎるうでの
『さて、そして、おそらくサルレイのしかけたワナがまんまと発動した。レオンとサンリアが迷宮に入り、セルシアもあとを追う。
ワシは先にいちど階下の迷宮を魔力でおおまかに
奴の日記は
「その時はまだ正気だったってことか?」
『一日ほど
これは恐ろしいことじゃ。メイラエは強い術師じゃったから。サルレイの術師としての能力は、恐らくどの
事前に聞いていたらしいサンリアとセルシアの顔がくもる。レオンはきょとんとした。
「この剣がすごいのか?」
『すごいんじゃよ! そこをまず分かれ! というかちゃんと使いこなせ! というかおぬしはまずはよう本来の形まで成長させよ!』
じーちゃんが急に怒って羽ばたいたので、レオンはあわてて反射的にごめんごめんとじーちゃんの
『はー。たまに
ま、正直一対一ではだれも勝てん。剣を集めて対処するしかなかろう。
しかし、おそらくじゃが、さすがにそこまで強い術師はそうそうおらんじゃろう。
……それに、直接対決をさけてことをはこぶ手も考えに入れておく。ワシらの目的は、あくまでイグラスを打ちたおすこと。敵を出しぬき一気にふところに入れば、かの者と
もちろん、
「そんなに強いなら、なんで今直接俺らに手を出してこないんだ?」
『ふむ……、……自分に万一にも危険がおよぶのを
メイラエは強いといっても剣を
「僕一人を倒すよりも、僕ら三人をまとめて、ということですね……。しかし、僕が城になど見むきもせず旅立つことも考えられたのでは?」
『そこは、
もし放置し出立するようなら、バケモノを街にときはなつこともしたかもしれんな』
「なにもかも計画のうちってことかよ。なんか、ムカつくな」
『ああ、まちがいなく、バケモノが倒された場合のことも考えているじゃろうな。次の剣か、その次……かならず近いうちにまた仕掛けてくるじゃろう。近さでいえば次は雷、水……』
「おじいさんは違う世界が近いとか遠いとか、分かるんですか?」
『うむ、
「俺、父さんのこと、いろいろ聞きたいな」
『……すまん、ムリなのじゃ。この体に、すべての記憶をうつすことはできなくての。人となりなどは記憶しているが、個々のエピソードなどは
道にしたって
これは本当にワシの落ち度じゃ、もうしわけない』
「いや、じーちゃんは悪くないだろ。俺もごめん」
じーちゃんがフクロウになった
『いや……そしてレオンには……
メイラエの日記に書かれていたのは、大魔導師サレイが来た、という一文じゃった』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます