「今の楽しい記憶も思い出もいつかは全部なくなっちゃうのかな?」そんなことをソラは言った。

「なくなったりしないよ。きっと」と僕は言った。するとソラは「本当に?」と僕の顔を覗き込むようにして言った。

「うん。本当」と僕は言った。するとソラは安心した顔をして「よかった」と僕に言った。

 ソラはぎゅと僕の手を握った。

 それはよくあることだった。 

 ソラは一人になることをとても、本当にとても恐れていた。「孤独は嫌い」とよく言っていた。「私たちは離れ離れにならないよね? 家族なんだからさ」とソラは言った。「離れ離れにならない」と僕はソラに言った。でもそれはソラを安心させるための嘘だった。僕たちはずっと一緒にはいられない。そんな予感があった。このときから確かに僕は感じていた。

 つないでいるソラの手はあったかいのに。機械のように冷たくはなかったのに。僕はそう感じていたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る