【短編エッセイ】ヘルシンキの伊能忠敬 〜ヘルシンキに恋した記録〜
保桜さやか
〜プロローグ〜
今思うと、あの頃のわたしはとても疲れていたのかもしれない。
前へ前へ進んだ学生時代。
どちらかというと運に恵まれ、挫折をすることなく大人になった。
初めて立ち止まったのは社会人になったとき。
今までなんとなく突き進めば結局はうまくいっていた、そんなわたしはその対処法を知らず自分の道を見失った。
どうしていいかわからない。
大人と呼ばれる世代に突入したとき、このまま進み続けていいのか?と今まで一度も気にすることのなかった疑問が頭に浮かんだ。
はじめましてのフィンランドは三泊五日の弾丸旅行でしかなかったけれども、自分という存在を知らない世界へ行きたかった。
理解できない言語に紛れてみたかった。
ヘルシンキ大聖堂の階段に座り、ぼーっと遠くまで広がる青い空を見上げ、こんなにゆっくりしたのはいつぶりだろうとふと思った。
ゆったりした雲の流れにあたりの音は止み、自分だけ時が止まったように感じた。
わたしは疲れていたのだと思う。
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