第28話 セバス。
「アリーシア。王都のブラウド商会の店が何店舗か売りに出されているそうだ」
「え? マクギリウス様?」
「それも、君が立ち上げた服飾の店エリカティーナと、魔法具の店マギアアリア、その二つのブランドだそうだ」
わたくしがブラウド商会に携わっている間に新規ブランドとして立ち上げた店舗。
順調に店舗数も伸ばし、王都の中心街だけでなく周辺都市にもお店を増やして居た、けど。
それが?
「ブラウド商会の内情はそんなにも悪いのでしょうか……」
先日ここを訪れたラインハルト様は本当に困っていらっしゃるようではあった。
彼の元に戻る選択肢は絶対にあり得ない、そうは思うものの、手塩にかけて育て上げたブランド、店舗、そしてそこで働く従業員のことを思うと心が痛む。
「どうする? あの二つのブランドは君にとって大事なものだった。なんだったら俺たちで買い取ることも視野に入れても構わないけれど」
「え?」
「だから。ブラウド商会としてではなく、俺たちで新しい商会を立ち上げるっていう方法もありだよな、と、そう思ってさ」
「それって……でも、そんなお金……」
「俺にも少しは資産がある。君の手伝いをしながら手法を学ばせてもらったろ?」
「マクギリウス?」
「あの三年間に自分の従者を使って投資を繰り返していたおかげでね。今回のあの二業種を買い取るくらいの資金はあるのさ」
「でも、そうしたら……」
マクギリウスのお金、わたくしのために使っちゃうの? でも……
「はは。金は天下のまわりもの。君が手をかければあの2ブランドは充分立ち直る。ちゃんと利益を産むことは間違いない。そうすれば君にも誰にも頼らなくても済む生活基盤ができるだろう?」
ああ。
確かにそれはちょっと魅力的。
お祖父様がもしお亡くなりにでもなったらここはお父様やお兄様の管理下になるだろう。
そうしたら今のような自由は無くなってしまうかもしれない。
この先のことを考えるなら、わたくしの趣味の魔法具製作も、お仕事にしていかなければいけないかなって、そう思い始めていたのも事実。
「でも、わたくしたちが表立って経営すると、ラインハルト様たちに見つかっちゃうわ」
「うん、そこなんだけどね。実はいい考えがあるんだ」
いい考え?
「入って、セバス」
え?
マクギリウスの声を合図に部屋に入ってきたのはブラウド商会で番頭的なお仕事をしてくれていた執事のセバス、だった。
「お久しぶりです奥様。いえ、アリーシア様。申し訳ありません……」
深々と頭を下げるセバス。かなりやつれている?
「頭を上げて、セバス。でも、一体どうしたの? どういうことなの?」
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