心のままに、幸せを求めて。
夜桜くらは
遠い記憶、独りで生きる決意
『駄目だ、レミン!』
俺はレミンの言葉を遮る。
『何言ってんだよ! そんなの俺は……!』
『いいんだ』
レミンはキッパリと言い切る。こちらに背を向けたまま。
『これはアタシが決めたこと。アタシのことはいいんだよ』
『よくなんかねえだろ! よくなんか……!』
『時間だ。これ以上の会話は許可しない』
アンドロイドの無機質な声が、冷たく響く。
『そこの女。お前の望み通りにしてやろう。ついてこい』
『ああ、分かったよ』
レミンはアンドロイドどもの元へ、一歩踏み出しかけ──俺の方を振り向いた。
『じゃあね、シグ』
レミンの姿と言葉が、ゆっくりと消えてゆく。
嫌だ、行くな。頼む、行かないでくれ──
「──ッ!」
声にならない叫びと共に、俺は目を覚ました。心臓がバクバクと脈打ち、全身から汗が吹き出していた。
俺はゆっくりと半身を起こすと、深呼吸を繰り返して息を整える。
またこの夢か。もう何度目かも分からねえ。
「……クソッ」
俺は拳でベッドを殴りつけた。こんなことをしても何も変わらねえ。そんなことは分かってる。それでも、そうせずにはいられなかった。
何年経っても、忘れられねえ。忘れてえのか、忘れちゃいけねえのかも──いや、忘れちゃいけねえんだ。こうして俺が独りで生きてんのは、あの日の俺の選択が間違ってたからなんだ。俺はもう、誰とも関わっちゃいけねえんだ。
「フー……」
大きく息をつく。この悪夢を見た時は、こうして自分に言い聞かす。そうするしかねえんだ。そうすりゃ、少しはマシになる。もう何度も繰り返してきたことだ。今となっちゃあ、俺が何を望んでんのかも分からねえ。いろんなもんが混ざりあって、どれが俺の本心かも分からねえんだ。
だが、まあいい。もう誰とも関わらずに生きてくって決めたんだ。そうしなきゃいけねえんだ。
俺はもう一度深呼吸してから、ベッドから抜け出した。
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