誤解じゃなかった
俺が決死の言い訳により命を繋いで。
なんとか機嫌の直った姉貴と一緒に、俺は学校へと登校していた。
「……姉貴」
「なによ」
「なんで今日はそんなに近いの?」
肩が触れ合うほどに近くを歩いている姉貴には俺は尋ねる。
今日の姉貴はいつも以上に近かった。
普段はこんなに近くじゃない。せいぜい隣を並んで歩く程度だ。
「別に……なんでもないけど」
姉貴は頬を膨らませてそっぽを向いた。
やっぱりまだ怒っているのだろうか。
この休日に俺は姉貴に色々と献上したりしたのだが、どうやら未だにご機嫌斜めらしい。
「姉貴……まだ怒ってる?」
「怒ってないけど?」
嘘だ。それは絶対に怒ってる人のセリフだ。
「だから、愛好と俺は本当に付き合ってないんだって。愛好が好きなのは俺じゃなくて萌園アリスの方だから。俺はめちゃくちゃ嫌われてるんだって」
「……ほんとに?」
「ほんとうほんとう。……あっ」
そこで俺は前方に見知った顔を見つけた。
後ろ姿でも特徴的な亜麻色の髪のツインテール。
「おーい、愛好!」
俺は愛好に手を振って近づく。
丁度いい、姉貴の誤解を解くのに協力してもらおう。
「みゃっ」
俺の声に振り返った愛好が変な声を上げた。
「あ、あああんた! どうしてここに……」
「一緒の高校なんだから同じ道歩いてもおかしくないだろ……」
おかしなことを言う愛好に首を傾げる俺。
「それよりも姉貴の誤解を解くのを手伝ってくれよ。お前がいなかったからこっちは大変だったんだぞ」
俺は愛好の手を掴む。
「ひゃあっ!?」
びっくりしたのか愛好が大きな声を上げた。
俺は慌てて手を離す。
「え、ああ、ごめん。いきなり掴んでびっくりしたよな」
アリスの時に手を繋いでたせいで感覚が麻痺していた。
愛好はあまり男性が得意じゃないんだった。
「べっ、別に……いいけど」
だが、返ってきたのは意外な答えだった。
「え、いいのか?」
「い、いいわよ。何度も言わせないで……!」
「じゃあ姉貴に一緒のとこに行って説明を……」
俺が愛好の手を掴もうとしたところで。
「その必要はないわよ」
いつの間にか姉貴が俺の背後に立っていた。
「り、理奈……!?」
「おはよう、愛好」
「お、おはよう理奈……」
愛好と姉貴がぎこちなく挨拶を交わす。
「姉貴が来てたなら丁度良かった。ほら、愛好からも言ってやってくれ。愛好が好きなのは萌園アリスだけで、俺は別に好きじゃないんだって」
「そっ、それは……」
愛好が目を泳がせた。
なんでだ。断言してくれないと困るんだけど。
「俺のことは嫌いなんだよな? 前はたくさん言ってたじゃん。姉貴にも改めてそうだって教えてやってくれ」
「う、ぐ……」
愛好はなぜか涙目で唇を噛み締めている。
「どうしたんだよ。俺のこと嫌いじゃないのか?」
「ば、ばかぁっ!!」
「へぶっ!?」
べちんっ!
愛好は俺の頬をまたビンタすると、走って去ってしまった。
「いてて……なんでビンタされたんだ? まぁいいや。でもこれで姉貴も分かったでしょ? こうやってビンタされるくらい愛好は俺のことが嫌い……あだぁっ!?」
「また嘘をついたわね、あんた」
いきなり飛んでくるアイアンクロー。
姉貴が俺の顔面を手で掴んだ。
「な、なんでアイアンクローするの姉貴!? どう見ても愛好に嫌われてたじゃん!」
「今のをどこをどう見たらその結論になるのよ」
更に強まる手の力。
ちゃんと愛好に嫌われている証拠を見せたのに、なぜか姉貴は怒っているみたいだ。
「くそっ、姉貴の目は節穴なのか……!?」
「節穴はあんたよ」
まずい、頭の骨がミシミシと言い始めてる……!
「とりあえず誤解だ! 誤解なんだ!」
「もうその手は通用しないわ。ついてきなさい。授業が始まるまでみっちりと絞ってあげる」
姉貴は手の力を緩めると、今度は襟首を掴んで引きずっていく。
その後、俺はなぜかみっちりと「女心が分かってない」と怒られたのだった。
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【あとがき】
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ここで一章は終わりです。
明日からは二章の準備ができるまで閑話などを書いていけたらと思います。
もし少しでも面白いと感じていただけたら作者のモチベーションになりますので、★評価とフォローをお願いします。
また、同じくカクヨムコンにも出している
『異能機関 〜陰キャぼっち俺、美少女を助けて異能をもらう。借金返済のために【異能機関】でエージェントをしていたらいつの間にか美少女に囲まれていた件〜 』https://kakuyomu.jp/works/16817330669233431116
をよろしくお願い致します。
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