『12月32日』

 やばい、大晦日だ…。

 急いで書かないと。


―――

『12月32日』


 またひとつ、月が終わる。またひとつ、月

が生まれる。なにかが終わるとき、それは、

また別の何かが始まるとき。

 でも、今日は12月32日だった。

 誰もいないところにひとりぼっち。どうし

てみんな、いなくなったの?

 置いてかないで。置いていかないでよ。

 …………。

 いいや、違う。

 みんなが置いていったんじゃない。私が置

いていったんだ。

 私が勝手に、先に進んだ。

 私だけ、今年に取り残されてる。私だけ

が、今年にしがみついてる。

 私は行けない。

 だってもう、私の中で過ぎる時間はないか

ら。


 その日、知らない誰かが生まれたらしい。

 その子は多分、来年の1月を生きている。

―――


セーフ。

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