第22話 お姫様抱っこ(される側)


 こいつ、ここにいたのか。ヒデヤと女は2人がかりで立ち向かおうとするが全く歯が立っていない一方的な戦いになっている。ヒュドラを倒すならAクラスの実力は必要のはず。


 彼らでは荷が重そうだ。


「なんだこいつ、強くね?」


「この雑魚が!!」


 ヒュドラが魔剣「デス・ガノン」を地面にたたきつけると、大きな爆発を起こし2人は吹っ飛ばされる。


「死ね」



 空中で身動きが取れない2人に、ヒュドラは体から翼を生やして一直線に飛んでいく。


「助けて、助けて、助けてくれぇぇぇぇぇぇ」


「いやぁぁぁぁぁぁぁ」


 仕方がない──嫌な奴だからといって、無視するわけにはいかない。こんなことはいくらでもあった。両足に魔力を込めてジャンプして、ヒュドラの元へ。


 何とか2人とヒュドラの間に割って攻撃を受ける。間に合った。剣に魔法を込めて、それを使って空中で身体を維持。魔力効率が悪いが、これしか宙に浮く手段はない。

 ヒュドラに視線を向けると、にやりと気味の悪い笑みを浮かべた。


「勇者め、かかったな」


 ヒュドラがピッと指をはじくと、周囲にマンドラゴが出現し始めた。それも、次々と現れ20体ほどとなる。


「狙っていたのか?」


「お前がお人好しなのは知ってる! この状況ならば、たとえ危険を承知でもお前は2人を助けようとする。たとえどんなクソ野郎だろうとな」


 何度も戦ってきただけはあるな。俺のことを知り尽くしているとは──。


「まともに戦っても勝てないのは知ってる。だから策を講じたのさ」


「待てヒュドラ、わらわもいるぞ!」


 ネフィリムが慌ててこっちに向かってくる。灰色の鳥のような翼を生やして。


「これはこれはネフィリム様。勇者様とデートですか?」


「もう人間たちを襲うような真似はさせぬのじゃ」



 ネフィリムがヒュドラに突っ込んでいくと、ヒュドラは大きく後退して2人は俺と距離を取る形となった。


「フン──ネフィリム様とて今は敵味方関係。剣を抜いたからにはこっちも相応の答えを出す」


 その瞬間、ネフィリムの周囲にもマンドラゴ。それも俺の時の倍近く。20体はいる感じだ。


「真剣勝負に卑怯もクソもあるか。勝ち残ることこそ正義なのだ。ちなみに俺の魔力を憑依させていて普通のよりも倍近い強さがあるぞ」


「変わってないな──」


 じっとヒュドラをにらみつけるネフィリム。負けはしないが時間はかかるかもしれない。



 考えていると、こっちのマンドラゴが一斉に突っ込んできた。四方八方から──これはまずい。

 無茶苦茶だが、突っ込むしかなかった。ここにいたら、袋叩きにされるだけだ。



 またヒュドラは何か策を講じてくるだろう。それでも逃げるわけにはいかない。みんな、決死の覚悟で戦い人々を守っていった。

 俺だけがそんな思いをするなんて納得いかない。



 まずは正面のマンドラゴの首を飛ばし1体。それから反転して2体。少しでも反応が遅れれば袋叩きになる中、何とか素早く反撃に出て1体ずつ倒していく。


 そして──。


「今度こそ俺の勝ちだ」



 7.8体のマンドラゴを倒した瞬間にヒュドラが上から突っ込んできた。正面のマンドラゴをしてにしていて対応できなかった俺に向かって一気に剣を向けてきた。何とか対応したものの振り向きざまの対応でパワーを殺しきれず、真上から攻撃を受ける。


 受け身をとれないまま一直線に落下。

 体が地面に直撃しようとしたその時──。


「間に合いました」


 どすっ!!

 首の後ろと膝周りに暖かい感触。地面に落下した感触とは違う、暖かい感覚。人の顔が見えて──状況を理解した。


 お姫様抱っこ。



 ピンク色のロングヘア。絶世の美少女ともいえる幼さと美しさを兼ね備えた顔つき。

 以前助けたNO1配信者、璃緒だ──落下寸前で、俺をお姫様抱っこしてきたみたいだ。

 璃緒は俺をお姫様抱っこしながらヒュドラの攻撃を受ける。


「澄人さん、大丈夫ですか?」


 璃緒が俺の顔を体の方に寄せてきた。

 大きなおっぱいに視界が遮られ、顔が見えないが声からわかる。心配してくれてる。


「あ、ありがとう」


「いいんです。私もからすみさんに助けられましたから」



 そして俺は璃緒の抱っこから降りる。女の子にされるお姫様抱っこ──初めてだけど、いざされるとちょっと恥ずかしい。この恩は、絶対どこかで返さないと。


 璃緒と一緒に宙を見上げると、「マンドラゴ」と対峙したネフィリム。


「わらわが相手じゃ。たとえもと配下だとしても、容赦はせん」


 じっと睨みを利かせるネフィリム。ヒュドラは、ゆっくりと後退しながらも剣を


「あんたと戦うのは不本意だが──仕方あるまい」


 今にも戦いになりそうになる2人。隣の璃緒は──剣をヒュドラに向け腰を下ろして両足に魔力を込め始める


「今度は私が行きます。澄人さんを傷つけさせたりは──しません!!」

「待って、今行くのは危険だ」

「私なら大丈夫です!」


 俺の言葉を無視して自信満々に突っ込んでいってしまった。ネフィリムと連携なんてしたことがないはず──心配だ。


「なんだお前」



「からすみさんの仇です」


 一気に突っ込んでいくが、ヒュドラに対応されてしまう。ネフィリムも助けに行くが、連携することもできずバラバラな戦いになってしまっている。


 おまけに璃緒の攻撃は防御を無視した力押しの攻撃ばかり。ヒュドラには対応され──。


「そんな攻撃で、俺が負けるかぁぁぁ!!」







☆   ☆   ☆


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