第16話 仲間を救え!氷狼の覚醒!

 竜気解放を発動したブライの攻撃、竜星群を受けたグルーズは、ピクリとも動かない。


 一方、竜星群を放ったブライは地上に降りると、警戒しながらもグルーズの方へとゆっくりと歩み寄る。


「(やったか?竜星群は全弾命中した。いくら頑丈なやつでも無傷で済むわけ無い。)」


 しかし……。


「あ"〜、痛ってぇ〜。ったくやってくれたぜ。」


「嘘だろ、あれで無事なのか!?」


「いや、結構効いたぜ?俺ぁ結構頑丈な方でな。けど、あれだけのモノを食らったのは、シュラのやつ以来だぜ。」


 ブライの魔法を受けながらも、のそっと立ち上がり埃を祓うグルーズ。


 着ていた服はボロボロで、所々に掠り傷が見られるが、平然としており、ブライは内心驚いていた。


「ふぅ〜。これが竜人の力か。いやぁ、参ったね〜。正直ナメてたわ。」


「(効いてない!?)ちぃっ!なら、少しでも食らわせる!!竜魔法“二式”!!鈎竜十爪撃こうりゅうじゅっそうげき!!」ゴオオオオオオオッ!!!


「――これりゃあ、出さないとなぁ。」


 ブライから放たれた十の斬撃、それが自分に迫るのを見ても、グルーズは逃げる所か笑みを浮かべると、その肉体が変化していったのであった……。 


◆◆◆


「はぁ、はぁ……!い、急がなきゃ……!「ソウガ!」ホムラ!」


 民達を避難させていたホムラにソウガと合流した。


 民達は裏山の方へと逃がし終えており、加勢に来たのだ。


「ソウガ、ブライは?」


「向こうで、グルーズって奴と戦ってる。急がないと……!」


「なら俺に掴まれ!俺が飛んで運んだ方が早い!」


 ホムラが背中に翼を出して、ソウガを抱えて空を飛ぶとブライの下へと飛んで行くと、そこには角と尾を生やしたブライと明らかに化け物になっているグルーズが彼を掴もうとしていた。


「ブライ!!炎矛ブレイズスピア!!」


「ちぃっ!?」


 ホムラの放った炎の矛を避けるグルーズ。


 その見た目は牛のような角、獅子の口と牙、筋骨粒々な体、熊のような太い腕と足、蜥蜴のような太く長い尾。


 ありとあらゆる獣が混ぜられているような獣のような姿をしていた。


「こいつ、いったい……!」


「俺が何者か知りたいか?俺ぁな、あらゆる獣を“魔獣”を基礎に産み出された存在“合成獣人キマイラ”のグルーズだ!!!今までは人型に抑えてたが、本気の俺は強いぜぇ!!!グオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


「こいつっ!なんて声、いや、咆哮こえ出すんだ……!!」


「耳が、頭が割れる……!!」


「ぐ、ぐううううっ!!?」


「喰らえ!!!すぅ……!!牙獣王の怒号ビーストブレス!!!」


ドゴオオオオオオオオオオオオオッ!!!!


「っ!!?鎧甲竜がいこうりゅう鋼楯たて!!!」


ドガアアアアアアッ!!!


 グルーズの放った強大な獅子の形をした咆哮ブレスを、ブライの竜の彫られた鋼鉄の楯が防ぐ。強力な咆哮に耐える楯であったが、そのブレスの力に圧されていき、ひび割れ始める。


「ぐっ!?この、なんて馬鹿みたいな!!?」


「ぉぉおおおおおおおおおっ!!!!」


「っ!?不味い!2人とも離れろ!!!翔竜波しょうりゅうは!」


ドドンッ!!


「「ブライ!!?」」


「がはっ!!?」


 ブライに吹き飛ばされた2人だったが、鋼楯は破壊されたブライはブレスと塘に城壁に叩き付けられてしまう。威力は軽減されたが、それでもダメージはかなりのものであったらしく、血を吐き出す。


 その中でグルーズはブライの事を評価し出していた。


「ほう?威力は落とされたか。だがまぁ、多少のダメージは与えれたな。(あのブライとかいう竜人の小僧、今はまだ発展途上だが生かしといたら脅威になるな。)……ここで消しとくか!!!!」


 グルーズは地面に差しておいた得物の大剣を抜くと、ゆっくりとブライに迫る。するとグルーズの前に、行く手を遮るように炎の壁が現れる。


 グルーズが左に眼をやると、そこには槍を構えているホムラがいた。


「なんのつもりだ、てめぇ。」


「ここから先は行かせない!!今度は俺が相手だ!!ダイアモンドファイア!!」シュンシュンシュンシュンッ!!!


「邪魔するな、よぉ!!!」ズバァァァァッ!!!


「なっ!?ぐはぁっ!?」


 大剣から振るわれた斬撃を受けたホムラは吹き飛んでしまい、槍を手放した上に炎の壁も消化してしまった。それを見てブライに向かって歩みを進めるグルーズに、背後からソウガが襲い掛かる!!


「はぁっ!!」


「ちぃっ!鬱陶しいガキ共が!!お前らが何人束になろうがな、俺には勝てねぇ、よ!!!」ズガアァァッ!!


「がはっ!!?」


「大人しくそこで寝てな。すぐに終わるからよぉ。」 


 ブライに迫るグルーズを余所に、ソウガは悔しさで拳を握った……。


 初めて異種族で出来た仲間であり、共に旅をしただけだが、とても楽しかった。何より見知らぬ自分の一族を助けるのに協力してくれた恩人でもある。


 そんな恩人を目の前で死なせるなんて事───。


「出来るかーーーーーーー!!!!」


 その時、月が雲の間から姿を表し、大地に月明かりが差し込む。


 それと同時にが真っ暗な大地を駆け抜けていき、その何かが駆けた後には凍てついた樹木のみが残されていた。


「んじゃあ、とっとと首斬るかね!───あぁ?」


ズバァァァァッ!!!


「ぐっ!!!?くそっ!!?なんだ!!?」


「グルルルルッ!!!」


 グルーズの腕を切り裂き、ブライを助けたのは一頭の少し大きめの狼に似た獣であったが、その体は硬い殻に覆われており、眼光も普通の狼よりも鋭かった。


 その獣を見たグルーズは目を見開く。


「こいつぁ……!“紫氷の魔狼しひょうのまろう”、クリスタルフェンリルか!!?バカな!?何で特レア級の存在がこの場所にいるんだ!?」


 クリスタルフェンリルはソウガを見ると近付く。


「……。」


「あ……。え、俺に触れって?」


「……。」コクッ。


 ブライを助けた存在、クリスタルフェンリルはソウガの言葉に頷くと、ソウガはクリスタルフェンリルの頭に触り、優しく撫でた。すると、クリスタルフェンリルは光の粒子となってソウガの中に入っていき、ブライ、ホムラと同様に一体化したのである。


 その瞬間にソウガの魔力がグンッ!と跳ね上がるのを感じたグルーズは距離を取って警戒心を露にしながら、ソウガの方に剣を向ける。


「……どうやらテメェも、ここで消しといた方が良さそうだな。」


「やれるもんなら、やってみろ!!冷たき咆哮コールドハウリング!!」ウオオオオオオォォォッ!!!


「なっ!?ちぃっ!!!?」ガキイイイィィッ!


「よしっ!!氷狼爪アイスネイル!!!」ズバァァァァッ!!!


「なぐっ!?」


「食らえ!!冷たい暴風コールドストーム!!!」


 ソウガの放った氷の鋭い斬撃、それを避けようとしたグルーズだったが、足はすでに凍結しており、動けずにいた。その為に氷の渦の中へと呑み込まれてしまう。


 渦の中は幾つもの鋭利な氷の刃が見え隠れしており、その刃がグルーズの体を削っていく。


「ちぃぃぃっ!!鬱陶しい!!!そんなに死にたきゃ一撃で……!!?」 


疾風竜閃しっぷうりゅうせん!!」ズバッ!!!


「ぐはっ!!?」


「さっきのお返しだ!!フレイムファング!!」


「がはあああっ!!!?」


 回復していたブライとホムラの2人による連携で、さらに傷を負うグルーズ。そんな中、2人は目でアイコンタクトをすると、宙にいたソウガに向かって叫んだ。


「「ソウガ!今だ!!」」


「はああぁぁぁっ!!!……氷牙群狼拳ひょうがぐんろうけん!!」ウオオオオオオォォォンッ!!


「なっ!!?」


ドッ!ドドッ!ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!


 凄まじい数の氷の狼、凡そ100体がグルーズに向かって迫っていき、100体の氷の狼達によってグルーズは地面に沈んだのであった……。

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