従軍天使は愛を知り堕天する

従軍天使は愛を知り堕天する

ぱちぱち、ぱち。

「この木ぜますね」「何処どこへ行く」

従軍じゅうぐん司祭しさい様の所に。隊長、俺も女を知らずに死ぬのは嫌なんで」

めとけ」


「いや、あんな可愛い子をあいつだけくとかないですよ」

「お前、あの子にいがあるか聞かれたか」

「別に、明日あした敵を殺しに行くのに、懺悔ざんげなんざぁ~しませんよ」


ぱちぱち。

「あの子は、殺し合いをめない俺達に神がつかわした使徒しと

「いや、御許みもとつかえる天使様が人にかれるはず」


ぱちっ。

「あの子は、司祭しさい様は、戦場で人生を知らずに御許みもとに戻る者達を見かねて、俺達につかわされた天使様だ」

「なら俺達の勝ち」


ぱち。

「いや、神はかな人のどちらにもつかない」

「なら何のためにっ、俺等は祈ってるんですっ、あの司祭しさい様は何のためにいるんですっ」


ぱちぱちぱち。

「あいつは明日あした死ぬ」「えっ」

苦痛くつうからち、苦悩くのうから解放かいほうする。いを残さず、安らかに主の御許みもとへとかせるためだ」


ぱち、ばち。

「なっ・・・、何故なぜ命は救ってくれないんですっ、天使様なら出来るでしょうっ」

「誰の味方もしてはならない、決して傷つけ合う者同士の片方を救ってはならない。それは天使様が罪を背負う事。主からのいましめだそうだ。そむけば天を追われ堕天だてんする」


ぱち。

「あいつを連れ戻してきますっ」

めろ、軍から処刑されたいのか、おまえの家族が家を追われてもいいのか」


ぱちぱちっ。

何故なぜっ、どうして見殺しにするっ」

かりにあの子がいなくてもあいつは明日あした死ぬ」


ぱちぱちっ。

「分らないっ、なら何が軍規ぐんきれるんですっ、明日あしたあいつを軍務ぐんむからはずせばいいだけしょう。それで救えるっ」


「言ったろ、苦痛くつう苦悩くのうからたれ、主の御許みもとに呼ばれるよろこびに満ちあふれ、何もうたがわず戦場を跋扈ばっこする」

「何を言ってるんです」


ぱちんっ。

「あいつは痛みを知らない、人殺しの苦悩くのうも知らない、手足を失っても動いて戦う不屈ふくつの戦士になるからだ」

「なんだよ、・・・それ」


ぱち。

「おまえは感謝する事だ。あの子にいがあるか聞かれなかった。おまえは手足を失い、どんな重傷をおっても生きて帰って来る。主のおぼしだ」

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