第10話
スナイパーが背中にいるというのは心強く、後ろを気にしなくていい戦闘は狩りに集中できた。
肉体的な疲労もない。が、ハートの消費は時間経過か敵を食らうことでしか回復できないから、どうしても休息は必要とする。俺たちはしばしば野営みたいに、休憩することがあった。
ロングヘアーの子との会話は続かなかったので、ロリポップガールの方に行った。
「クイッキーはここに来て長いのか」
「敬語を使えよお前は」
「じゃあ名前を覚えてくださいよ。俺はリヴィーズです」
「おう、りびーずな。はいはい。あたしは第三層の攻略に携わったやつらから戦い方を教わった、最古参組の後続だよ」
「最古参組って、誰ですか」
「シャークマティ、レオ、ソンズの三人だよ」
三強か。
いや、違うか。シャークマティって人は初めて聞いたな。まぁ誰でもいいや。
今の三強はシルクとレオとソンズ、と。
夢世界にいる時間が長ければ長いほどレベリングに勤しむ時間も長く、ハートもさぞ強くなっていることだろう。今だからこそ、その三人がどれだけ途方もない力をもっているのか、想像ができる。
「具体的に誰の後続なの」
「んー、まぁ、レオだよ。第四層で合流して、ずっと一緒に戦ってきた。アイツは脳筋ゴリラだから、あたしとは、まぁ、その、あ、相性がよかったんだよ」
「ふぅーん。じゃあ、クイッキーは準最強って感じか」
「不意さえつければ誰にも負けねぇよ。狙撃できるのも、あたしくらいだからな」
「拳銃の作り方くらい教えてくださいよ」
「まぁ、回転式拳銃くらいなら簡単だから、お前らでも覚えられるんじゃねーかな」
それから俺たちはリボルバーの作り方を教わった。
スミス&ウェッソン製らしい。知らんけど。銃の構造よりも、弾丸の製造のほうが複雑だった。
俺の戦法は拳銃によるミドルレンジの攻撃と、剣による近接攻撃の二刀流になった。
「狙撃銃と拳銃じゃ、狙える距離が雲泥の差だ。要因は色々あるが、まぁ一番は銃身だな。銃身が長くないと方向がブレやすいんだ。次に弾頭。イデリアに空気抵抗はないが、ロングレンジを狙うなら弾頭に高密度のシリムを与える必要があるから、現実世界の弾丸に近い形状になる」
「難しいなぁ」
「お前らは覚える必要ねぇよ。あたしの専売特許だからな」
「ふぅん」
銃身と弾頭。
逆にそれさえクリアしちまえば別にスナイパーライフルじゃなくてもいいんだろう。ここは何でもアリの夢の世界なのだから。
「ところでクイッキーってなんでこんな銃器に詳しいの。現実じゃミリオタのおっさんなの?」
「実家が銃火器扱ってんだよ」
「え、日本人じゃないのか」
「イデリアじゃ会話も『イメージ』で行ってる。だから言語の壁もない。普通に異国民が大勢いるよ」
初耳だ。
全世界から集められた価値観もごちゃ混ぜのやつらがひとつの組織に集められてるってすごいな。
まとまるのか? いや、まとまってねぇから諍いが起こってるのか。
「さて、そろそろ経過報告を兼ねて拠点に戻るか。そろそろレオに会いた……会っておかないとな」
もうこいつレオのこと絶対好きだろ。
「レオとは付き合い長いのか」
「つ、つつつ付き合ってねぇよ!!」
「いや、そっちじゃなくて。知り合ってから長いのかって」
「あ、ああ。そっちね。ああ。長いよ。もう、半年は経つから」
半年は短いだろ、と思った。
一日千秋の思いでずっと一緒にいたんだろうな。
「拠点、町、人、たくさん……」
ロングヘアーの少女は、何かブツブツと呟きながら歩いていた。
亡霊みたいな、ゆるりとした歩き方だった。
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