短歌十一月まとめ

七水とひろ

第1話

実はもう天国なんてないことを告げに降り立つ最後の天使


コンビニで手に入る人もいるけれどヴィトンで買えない人もいる愛

RIUM #初句「コンビニで」


みな僕をぬいぐるみ的に愛してた僕はぬいぐるみだけを愛する


死にたいと口にしなかったことだけは褒めてくださいあとはごめんね


読んでいた本からふと目を上げるときいちばんにきみの目に映りたい

#短歌作ろう テーマ「ベル」


人間は分かり合えたりしなくってそれだけ分かっていてどうすれば

RIUM #連想短歌 「痛み」


わたしにはあまりに眩しすぎたみたいきみとの記憶が白飛びしてる

#短歌作ろう テーマ「白」


三限の授業が終わった黒板に世界の歴史が刻まれている

#短歌作ろう テーマ「黒」


抱き寄せた布団は冷たいままでしたあなたのいない冬が再び

#短歌作ろう テーマ「体温」


脇道に逸れていることも気づかずに歩き続けるこの先は海

#うたの日 「逸」


過ぎ去った日々に落としたがらくたを拾い集めるかなしみは愛

#短歌作ろう 詠み込み「かなしみは」


神さまはどこにもいないこの罪を贖えるのはただ人にだけ

#短歌作ろう テーマ「ゴジラ」


自分だけ不幸を背負って生きてると一度言わせて、そして忘れて

RIUM #初句 「自分だけ」


真っ青な空には入道雲がいい夏の匂いに囚われた僕

#うたの日「雲」


いちばんに夜空に浮かぶ三角を見つけて辺をなぞる指先

#うたの日 「辺」


宇宙から降り立つ少女は神様になる少年を討ち取る定め

#うたの日 「少年/少女」


あこがれは理解と線対称らしい折り曲げてみればきみと重なる

#短歌作ろう テーマ「あこがれ」


食べるのが生きることなら人生はUber Eatsで運ばれている

#うたの日 「Uber Eats」


お下がりの大きなシャツに貝ボタン付けてワンピースに仕立てるの

#うたの日 「貝」


あの冬にきみから離した指先は今年もいっそう冷えてゆきます

#うたの日 「いっそ/いっそう」


間違えて二冊買ってた本たちは真夜中そっと再開を祝う


ママからはぬいぐるみ的に愛されていたからきっと僕は無口だ

#うたの日 「的」


人々の罪を背負った幼子は母に抱かれ眠る静かに

#うたの日 「ミケランジェロ」


ヴィランにも悲しい過去はあるけれど同情じゃなくて罵声をくれよ

RIUM #連想短歌 「人気者」


可愛くはなりたいけれど通販のカートにウィッグを入れては消して

#うたの日 「鬘」


何もかも上手くいかない日の終わり箪笥の角にローキックした

#うたの日 「ローキック」


エナドリを配っていたよと会いに行く人がいなくて眠れない夜

#うたの日 「配」


買ってきたアイスをすっかり忘れててもう子どもには戻れないんだ

RIUM #初句 「買ってきた」


自動詞の強さみたいに人生が独りで助かったりしないのに

#うたの日 「自動詞」


エンジンの爆音叫声パトカーのサイレン地元の治安悪すぎ!?

RIUM


黒板に蛇たちが踊る五限目は光源氏が愛を囁く

#うたの日 「蛇」


人形になってこの世を生き抜くの鼻先にチーク目元にはラメ

#うたの日 「鼻」


教室でみんなに合わせてへらへらと笑う僕こそゾンビだろうか

#うたの日 「ゾンビ」


JR舞浜駅のメロディは人々に次の魔法をかける

#うたの日 「舞」

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短歌十一月まとめ 七水とひろ @tohironanami

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