第115話 実技試験

「エドガーくん、大丈夫?」

「お恥ずかしいところをお見せしました。大丈夫です」


 その前の会話を聞かれていたから察してくれたのかもしれない。マリア様は深く聞いてこなかった。 


「班に遅れてしまうので先に行きます。失礼します」

「あっ、エドガーくん‥‥‥」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 実技試験が始まった。


「次! ほう、キミは『火魔法』か。OK、そっちの的目掛けてやってみてくれ!」

 元兄上は意外なほど真面目に試験官として仕事をしていた。


「いいね!! 良かったと思うよ! 次の人は準備を!」

「キミは『剣術士』のスキルか! いいね、もし学院試験に落ちたとしてもキミの才能は兵士に向いてるかもしれないよ。興味あったら是非!」


 合格が厳しい人にも次の進路をアドバイスしてる。次は俺の番だが‥‥‥。


「次!! ‥‥‥なんだ、お前か。お前はスキル無いんだからやらなくていいぞ、時間のムダだ!! はい、次の人!!」


 ‥‥‥飛ばされた。周囲も少し騒つく。


「ヴィルヘルムさん、さすがにそれはあんまりなのでは‥‥‥?」

「いやいや、いいのですよ、スキルが無いのに実技試験なんて。というかそもそも受験しようという方が間違えてるんですから」

 同僚であろう人からの忠告にも反論していた。


「‥‥‥わかりました、ありがとうございました」

 俺は頭を下げて帰ろうとした。


「!? 『一同敬礼』!!!」


 突然の号令に試験官の人たちは全員が直立不動で敬礼した。受験生はどうして良いかわからず狼狽えている。

 俺はとりあえず臣下の礼をしておいた。他の受験生もそれに続いた。


「おー、やっているな。いやいや、邪魔してすまないな、皆楽にせよ」

 聞き覚えのある声‥‥‥この声は?


「『直れ』!! 軍務卿、このようなところにわざわざお越しになるとは‥‥‥」


「いや、将来有望な子達だからな。この目でなるべく見ておきたくてな」


 そうだ、陛下と謁見した後にライフルを献上した時に呼ばれて来て、その後急いで去っていった『王都の英雄』レオン・クラウディウス軍務卿だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る