第102話 夕食後

「いや、すっかりご馳走になってしまったよ」

「私も大満足よ。特にオリザ酒が美味しかったわね」

「私は全部美味しかったですわ!」


 デザートも終わってひと段落。今は寛いでもらっている。


「宿は隣の建物になります。と言っても渡り廊下で繋がっておりますが」

 最初は温泉施設だけを作って宿は別にしてたんだけど雨の日とかで外に出るのが面倒になり、それならばいっそのこと繋げてしまえ、とザルトに頼んで繋げてもらった。


「ではこちらで本日は以上になります。何かありましたらお申し付けください」

 頭を下げて帰ろうとしたら腕を掴まれた。


「エドガー、接待のホストご苦労様。今日はこのあと予定がないならもう少し話していけ。ほれ、楽にせい」


「そうですわ、エドガー様。そういえば受験の件はいかが致しますの?」

 あー、受験か‥‥‥。すっかり忘れてたわ。


「‥‥‥まだ何かやることが残ってますの?」

「あ、いえ。やる事はだいたいやりましたので大丈夫といえば大丈夫ですが‥‥‥」


「何か不安があるのか?」

「そうですね‥‥‥。ここを誰に任せるかという点と試験の内容ですね」


 ここに何かあった場合に対応できる人材がいれば良いのだけれど。


 あとは試験内容は全く知らない。追放されてからは行く発想すら無かったから調べてもいない。


「そうだな、後釜についてはカールに任せようかと思う。存じているか?」

 カール様‥‥‥ゲオルグ様の次男だ。


「お会いした事はありませんがお噂はかねがね‥‥‥」


 カール•ウェストール 

 王都学院を首席で卒業。軍務卿の元で用兵を学び、二年目にして北の遊牧民族との戦争にて活躍、勲章を授与。若くして王都の白銀騎士隊の隊長に任命される。

 

「将来の事を考えて内政も経験しておいた方が良いかと思ってな。もちろんエドガーが気に入らなければ他を探すが‥‥‥」


 面識がないので人となりがわからないが優秀な人材である事は間違いない。


「ゲオルグ様のご采配となれば異論はございません。私でも出来るのですから間違い無いかと」

「‥‥‥皮肉か? 皆がお前ほど出来たら苦労せんわ、ははは!」


「あの‥‥‥試験内容ですけど。学科試験と実技試験ですわ。学科試験は『言語』『算術』『魔法学』といった感じですわ」


 ほほう、なるほど。『言語』は日本の教育でいうところの国語だな。『算術』は数学。


 『魔法学』は魔法概論、魔法理論、魔法歴史、魔法陣の描き方など魔法に関する授業でこちらの世界独特のものだ。


 言語と算術に関しては今からでもなんとかなりそうだけど、魔法学は範囲が広過ぎるだろ。とても全部はやりきれない。


 そして一番の懸念は実技試験だ。

「‥‥‥実技試験とはもちろんスキルの実技‥‥‥ですよね?」


「もちろんで‥‥‥はっ!!」

 エリーゼ様は気付いたらしい。


 そう、俺はスキルがない。

 つまり実技試験は0点確定という訳だ。

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