第100話 お夕飯
「カンパーイ!!!!」
みんな温泉に浸かり、程よく疲れたところで夕飯だ。
「本日のメニューですが。まずは『お通し』です。こちらの茹で枝豆です」
みんなのお膳に小鉢に入った茹で枝豆が届く。
「枝豆‥‥‥? 変わった形の豆だな?」
「それは枝豆のさやです。中身の豆だけ食べるのです。こうして‥‥‥」
枝豆を取り出して食べてみせる。
真似をして食べてみる一同。
「これは‥‥‥存外に美味い!」
「これは揚げポタート同様に手が止まりませんわ」
「ぷちぷち出てくるのも楽しいですわね」
よし、掴みは良さそうだ。
「これは採れたての茹でたてですので。これにはビールが合いますよ」
「その通り! 夏にはもっと美味かったぞい!」
「夏の豆を今の時期に‥‥‥?」
「採れたて?」
あ、そういえば見せるの忘れていた。ビニールハウスならぬクリスタルハウス。
「まもなく冬ではありますが夏の野菜が採れるように工夫した建物がありまして‥‥‥明日ご案内しますね」
実物を見てもらった方が早いし、収穫体験もしてもらった方がいいだろう。
「次は『焼物』 トラウモンの串焼きです。串を持ってそのまま齧り付いてください」
トラウモン‥‥‥鮭にも鱒にも似たような川魚だ。丸焼きではなく焼き鳥のように一口大に切ったものを串に刺してある。
決して貴族に出すようなメニューではないが味は絶品だ。
「ふむ、トラウモンか! 懐かしい、若い頃遠征中によく食べたぞ。こんなには美味くはなかったがな」
「私もエリーゼも初めてですわ」
エリーゼ様は何か気づいたようだ。
「このお魚、塩ではなく何か他の味がついてますわね?」
「さすがはエリーゼ様。ここで作った調味料『ミソ』に漬けておいたものになります」
西京焼きのような風味を感じ取ったのだろう。
「これにはオリザ酒が合うはずです」
「おっ! 待っておったぞ!!」
「エドガーくんに焦らされてしまったわね」
いやいや、人聞きの悪い事言わないでほしいな。イザベラ様の注ぐ分減らしちゃおうかな。
いや、いいや。
きっと何度も注ぐ羽目になるし‥‥‥。
「!! これは合うなぁ!」
「うふふ、これはマリアージュですわね」
俺とエリーゼ様は炭酸果実水だ。残念ながらさすがにマリアージュという程合うわけではない。
「むー! 大人ばっかりずるいですわ!!」
「まあまあ、エリーゼ。大きくなってから楽しめば良かろう」
エリーゼ様はまた膨れてしまった。
「お酒が飲めるようになったら一緒に飲みましょう。エリーゼ様を特別にご招待致しますよ。それでご容赦ください」
「えっ!? それって‥‥‥?」
エリーゼ様が真っ赤になってしまった。
んー? なんか変な事言ったかな?
ゲオルグ様が酒の手を止めて口を開く。
「エドガーよ、それでは口説いているのと変わらんぞ?」
「あらあらまあまあ、エドガーくんなら申し分ないわねぇ」
え!? そう取られちゃうのか‥‥‥。
「つ、次の料理を取ってきます。お待ちください!」
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