第75話 衛生対策
マスクや消毒に関してのルールを定めた。
日本における感染症の基本対策を参考にしてみた。
・屋外で一人の場合はマスクはしなくて良い。
・屋内に入る時は消毒もしくは手洗いをする。
・発熱が疑われる場合は外出を控える
広い家以外は現実的に別の部屋に隔離するとかはほぼ無理なのでその辺はできるだけ‥‥‥とした。
セリスに採ってきてもらったスライムの皮と細い管状の植物を使った霧吹きもイブに作ってもらった。これで消毒用アルコールも噴霧出来る。
体温計のような魔道具も作った。
あとは発熱者が出たらポーションを使う備えもある。
行商人の人には村の入り口で手の消毒をしてもらい、マスクの着用を義務付けた。
酒場ではそれぞれの席を充分に離して座るように、向かい合わせにはなるべくならないように指導した。クリスタル製の仕切り板も設置した。
これでとりあえずなんとかなるだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「すみません、メッサーラから来ました衛生監査官のフィルと申します。行政官のエドガー様はいらっしゃいますか?」
馬車で誰かが来たかと思ったら領都のお偉いさんだった。メガネをかけた細面の優しそうな男性だ。
「テオドール村のエドガーです」
俺は急いで臣下の礼を取る。慌てて駆け寄ってくるお偉いさん。
「いや、おやめください! 行政官様の方が立場は上なのですから!」
「え、そうなんですか?」
あぁ、そういえば俺ってば準貴族でしたわ。テオドールだとみんな親しく話してくれるから忘れてたわ。そんなの創造神だってきっと忘れてるさ。
応接室に案内して監査官殿をソファに座らせる。ソファに座った瞬間に目を見開き、ソファをじっと見つめていた。俺に見られている事に気付いて一つ咳払いをして話し始めた。
「こほん、失礼しました。では本題に入りましょう。ここまで村を見させていただきましたが、口と鼻を覆っている方を多く見かけましたが‥‥‥」
「あぁ、わたくしの指示です。みんな守ってくれているようですね」
フィルさんのメガネの奥の目が光った。
「ほう、エドガー様には流行り病の原因に目星がついているのですか?」
「あくまでわたくしの推測ですが、目に見えないくらいの小さな微生物が原因ではないかと思っております。この意見、衛生官殿はどのようにお考えになりますか?」
ふぅ‥‥‥と一息吐いて話し出す。
「やはりエドガー様は素晴らしい見識をお持ちですね。今回の流行り病、保健衛生所でも同じ認識であります。今回はわたくしがその事と対策法について指導、指示するためにやってきたのですが、いやはや‥‥‥これでは出番が有りません」
やはりこれで対応はあっていたようだ。異世界だからな、原因が呪いとかじゃなくて良かった。
「‥‥‥出来ましたらこの対策について詳しく教えていただきたいのですが」
この世界全体として衛生レベルが上がるのは良い事だと思い、包み隠さず対策について説明した。
「‥‥‥我々の知識の遥か先を行っておられる。なんという事‥‥‥。そのような知識をどこで‥‥‥? いえ、失礼致しました」
いつも聞かれる『どこでその知識を?』を飲み込んだ?
「どうかしましたか?」
「いえ‥‥‥大変失礼致しました、我が領主ウェストール様より厳命されておりまして」
「厳命? なんと?」
「『エドガー様の知識の元を正すな』と‥‥‥。つい口を滑らした事はどうか内密に!!」
いや、そこまでの秘密じゃないだろ。
土下座もやめて。もちろん許したさ。そもそも罰する話でもないけど、そうしないと話が進まないからな。
「‥‥‥‥‥‥」
今度は黙ってしまった。なんだろう?
「エドガー様!! メッサーラまでご同行願います!!」
「えぇっ!?」
俺ってばやっぱりなんかし過ぎて捕まるの!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます