第50話 オリザ栽培計画

 オリザ(米)の栽培計画について。

 

 まずは苗作り。土を撒いた苗箱に種籾を蒔く。温室で温めて苗を育てる。育ったら田植えをする。水を張って雑草に気をつけて。秋になったら稲刈り。

 

 これから冬を迎えるこの時期に出来るのは田圃作りか。土地選びからしないとな。


 麦畑は乾燥してても良いけど田圃は湿ってて水分の保持が出来るような土じゃないといけない。土もだけど畝や土手もちゃんとしないと泥が流れちゃうからな。


 前世の記憶を掘り起こして田圃作りを開始した。例の魔道具畑起こし機も使おう。畝はさすがに自分でやらないとダメだな。


「エドガー様、今度は何を作り始めたのですか? 変わった畑ですね?」

「ティナ、この間買ってきたこのオリザを育てようと思ってな。こういう泥濘んだ田圃で作るんだよ」


 泥まみれの俺を見てティナは飛び込んでくる。当然泥が跳ねる。


「わっ! ぷっ! 田圃に飛び込むなっ!!」

「あっ! すみません! その様な作業、言っていただければ私がやりますのに‥‥‥」


「俺も自らやってみないとダメかと思ってな」

「エドガー様‥‥‥」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 一応田圃らしきものは出来た。

「ここにその種籾とやらを撒くのですね!?」

「いや、違う。苗を育ててから植えるんだ」


 ティナは困惑した表情だ。

「? ‥‥‥種を蒔いたら育つのではないのですか?」

「まぁ、それでも育つのかもしれないが。まぁ俺の知識の通りにやってみようと思ってな」


「‥‥‥失礼致しました」

「いや、手伝ってくれてありがとな」


 とりあえずの小さな田圃作りは終わった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 午後は新しい料理を作ってみる。この世界の小麦粉の使い方はパンばっかりだ。他に行けばいろいろあるのかもしれないが俺の記憶にはない。


 作ってみるのは「麺」だ。麺が作れれば料理の幅が広がる。前世の記憶を頼りに麵打ちをしてみる。

「あらあら、エドガー様。今度はなんですか? 小麦粉で遊んじゃダメですよ」

「遊んでるわけじゃないよ。ティナ、麺って知ってるか?」


「めん‥‥‥?」

「小麦粉を練って生地を作って切ったり伸ばしたりするんだ」


「あぁ、ヌードゥルですか! 子供の頃によく食べました、懐かしいです!」

「‥‥‥ノナン族の頃の話?」


「ええ、よくそうして食べた記憶があります。私がやってもよろしいですか?」

「あぁ、頼む。俺がやると上手くいかないだろうから」


 ティナが生地を捏ね始めた。力が強いからテーブルがギシギシいってる。


 麺の方は任せるか。俺はソースでも作ろう。

 トメートとオニオニンを刻んで炒める。もちろんトメートの種は捨てずに保存する。

 塩で味を整える、麺に絡めるので味は少し濃いめに。

 

「エドガー様、こんなものでいかがでしょうか?」

「うん、量が思ったより多いけど。いいんじゃないか? 鍋で茹でよう」

 ティナは本当に器用だな。


「‥‥‥なんかいい匂いがする。ワタシの分もありますか?」

 フルルが匂いを嗅ぎつけたのか見張り台から降りてきた。


「あるっちゃあるからいいんだけど‥‥‥。見張りはいいのか?」

「‥‥‥お腹空きました。もう一人居ますし。それ食べたら戻ります」 

 まぁ、いっぱいあるし。戻るのは食べてからでいいか‥‥‥。


 沸騰した鍋に塩を少し入れて麺を茹でる。

 麺同士がくっつかない様にしばらくかき混ぜる。

 

 数分茹でた麺を一本取って食べてみる。

うん、アルデンテだ。少し芯が残るくらいで引き上げる。


 それぞれの皿に取り分けてトメートソースをかけたら出来上がりだ。


「わぁ‥‥‥!!」

「‥‥‥美味しそう。食べていいですか?」


「もちろんだ。いただこう! あ‥‥‥しまった」

「!? なんですか?」


 フォークが人数分なかった。ロキソに言って作っておいてもらえば良かった。

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