第43話 マッシュ達の処置

 スライム状態から元に戻れたティナと俺で全員を縛り上げた。

 このまま騎士隊に引き渡しても構わないのだが‥‥‥それは少し勿体無い気がして。


「ん‥‥‥、ここは? なんで縛られてる? おいっ!! お前ら起きやがれ!!」

 

 どうやらカウンターを食らって気絶していたマッシュの目が覚めたようだ。


「よう、お目覚めかい? マッシュ」

「ぐっ‥‥‥クソガキ! てめーがしやがったのか!?」

 その通り、ゴロゴロとしか動けないマッシュくん。


 さぁて、どうしたものか‥‥‥。


「エドガー様、こんな奴らは生かしておいても何の意味もありません。さっさと処分するべきです」

「いや、違うぞ。ティナ、人は何かしら役目を持って生まれてくるものだよ」


「!! 申し訳ございません」

「いや、構わない。そう思いたくなる事もあるからな」


「へっ! オレも何かの役に立つとでも言うのか?」

「もちろんだ、マッシュ。お前のスキルはなんだ?」


 マッシュは苦虫を噛み潰したような表情になり呟いた。

「‥‥‥ほぅ」


「え? なんて!?」

 聞こえなかったので聞き返す。


「‥‥‥いほう」

「いほう? 違法?」


「何度も言わせんじゃねぇ!! 『裁縫』だよ!! 文句あっか!?」

 真っ赤になって叫ぶマッシュ。


「裁縫? 素晴らしいスキルじゃないか!!」

「どこがだよ!? かっこ悪りぃじゃねーか!!」


「お前だって服は着るだろう? 人が生活する上で必要な『衣食住』の一角だぞ? 何がかっこ悪い事があるんだ?」

「てめー、俺がこのデカい身体でチマチマと針仕事なんか出来ると思ってんのか!?」


 なるほど、そういう思考のこのパターンか。


「‥‥‥やった事はあるのか?」

「は?」


「やった事があるのかないのかを聞いてんだよ、答えろ!!」

「‥‥‥ねぇよ。そんなもんある訳ねーだろ!!」


 だろうな。

 おそらくマッシュはスキル『裁縫』を得てからも「男がそんな仕事をするのはかっこ悪い」というイメージを拭い切れなかったのだろう。

 

「わかった、俺がお前の舞台を整えてやる。このハンカチに刺繍をしてみろ」

「は? なんで俺がそんな事を‥‥‥?」


「ティナ、市場で裁縫道具を揃えてきてくれ。こいつらなら大丈夫だ。縛られてるから」

「‥‥‥承知致しました。急いで戻ります」

 ティナはヒュッといなくなった。

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