第35話 領都メッサーラへ
「じゃあ領主様のところに行ってくる。みんなで留守を頼むぞ」
「行ってらっしゃいませ、エドガー様。お気をつけて‥‥‥」
翌日、フルルに見送られながら俺とティナ、ロキソとイブはパーシヴァル様の馬車に乗って辺境爵領都に向けて出発した。
流刑者の俺たちがこの村から出ても良いのは騎士隊が同行するか、村が襲われて避難する時だけだ。
今回のケースは前者だな。
フルルはこの村の最強の守護神だ。遠くまで見えるし聞こえる。相手からは見えない距離からの狙撃も出来る。
テオドールの村に入る為にはフルルに敵ではないと証明しながら入るしかないのだ。旗を掲げて声を掛けて。
でないと頭を撃ち抜かれる可能性もある。
フルルの知らない貴族とかだと問題になりそうだが、今のところはこの流刑者の村をこぞって訪れる貴族様はいないだろう。
俺たちが辺境爵領に行くのはモンスターとの戦いの報告と戦費の補填のため、あとは今後の蒸留酒製造の予算と人材獲得のためだ。
前もって早馬便でパーシヴァル様が手紙を出してくれたようなので話はある程度通っている‥‥‥はずだ。
ロキソとパーシヴァル卿は昼から飲んで盛り上がっている。
ロキソはともかく騎士爵様は現在進行形でお仕事中じゃないのか?
仕事しながら酒飲んでても良いのか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ウェストール辺境爵軍は行軍が速い。街道がちゃんと整備されているのとよく鍛えられているからなんだろうな。
「パーシヴァル様! 野営の準備が整いました」
「うむ、各班交代で備えながら休息を取れ。何かあったら呼べ」
「了解致しました」
兵士さんは敬礼して出て行った。
「さて、君たちは野営はした事があるかな? ここではろくなものは出せなくてすまないが村で世話になったお礼をさせていただきたい」
案内されて入った大きなテントにはテーブルとちょっとした料理が並んでいた。
干し肉と干し果物、それと固いパン。俺以外はワインが一杯ずつ付いていた。
この世界では保存食というとこんな感じなんだろうな。美味い保存食を作れば儲かるかも‥‥‥と思いながら食べた。顎が疲れた。
この世界には缶詰は無さそうだ。缶詰を作るか。到着したら辺境爵様に相談してみよう。作るのは金属加工スキルのロキソがいるからすぐに作れるだろう。
缶詰、確かブリキ製だったな。ブリキは薄い鉄板に錫メッキだったような。
ロキソに明日の馬車内で相談しよう。
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