第22話 泣き虫スナイパー

 エドガーとティナがフルルの所に戻ると、フルルはライフルを横に置きしゃがんで号泣していた。


 フルルに近づき頭を撫でるエドガー。

「よくやったな、フルル。期待以上だ。当日も頼むぞ」

「‥‥‥うぇーん!! エドガーさまー!」

 フルルは立ち上がりエドガーに抱きついて泣いた。

 フルルのほうが背が高いため絵面的に違和感があったがそれは良いだろう。


「‥‥‥」

 ティナは普段であれば全力で止めたはず。

 しかし今回の先程のフルルの狙撃中の思いを慮り‥‥‥、止める事は出来なかった。


『自分を信頼してくれている人の期待に応えたい』という思い。

『自分の不手際でもっとも敬愛するべき人の手を、命を、人生を、奪うかもしれない』という思い。


 二つの思いがせめぎ合う、そんな心持ちだった事が容易に想像出来たからである。


 ティナは思う。

 もし自分だったらその決断と実行が出来ただろうか?

 おそらく無理だろう。


 だからあれはフルルが受け取るべき褒賞である、と納得したのであった。


「‥‥‥私も頑張らなきゃ!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 フルルがようやく泣き止んだ。俺の方が背が低いから髪の毛が涙で濡れてしまった。


「フルル、思い出すのは嫌かもしれないけど。どんなモンスター達がいたか教えてくれないか? 覚えてる限りでいい」


「‥‥‥はい。里を襲ってきたのは、ゴブリン、オーク、フレイムゴーストです。モンスターにしては統率された動きのように感じました。見られなかっただけで他にもいたのかもしれません」

「ふむ、そうか。ありがとう、参考になった」


 ゴブリンは一匹一匹はそこまで強くはないが数が厄介だ。300体と想定しておくか。


 オークは中級冒険者以上でないと大苦戦するだろう。30体と想定。


 フレイムゴーストは厄介だ、物理攻撃が効かないからな。20体と想定しよう。


 あとは謎の司令塔役のモンスターがいそうだな。これは1体でいいか。


 敵は約350体と想定。

 対するこちらの戦力は120〜150人程度。

 弾丸は1000じゃ足りないな、10倍は欲しいけどさすがに無理だろうな。


 麦の収穫にも少し早いんだよなぁ。あと少し経ってたらちゃんと刈れたのになぁ。

 みんな頑張ってたの知ってるから余計に不憫で。


「‥‥‥エドガー様? どうかしました?」

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

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