第15話 訪問者

 あれから数日、太陽がだいぶ傾き、周囲がオレンジ色に染まったくらいの時間。


「テオドールの村はこちらでよろしいですか?」

 

 フードを目深に被ったすらっとした人が訪ねてきた。声からすると女性だが何者だろうか?

 

 この村を女性が一人で訪ねてくるなんて事はまずない。

 ここは流刑者の村だからだ。


「はい、そうですよ。テオドールにようこそ」


「そうですか。良かっ‥‥‥」

 そこまで言うと女性はふらっと倒れてしまった。

 駆け寄った俺とティナでギリギリ支えられた。

 危なかったな。


 するとフードがめくれてしまい顔が露わになる。薄い銀色の長い髪、絶世の美しい顔、そして尖った長い耳。


「‥‥‥エルフ!?」


 珍しいなんてものじゃない。俺は初めて見た。

「とりあえずベッドに運んで寝かせましょう」


 エルフさんはとりあえず村長宅のベッドに寝かせた。俺の見た感じだと極度の疲労だ。話を聞くのは回復して起きてからでいい。


「‥‥‥エルフ、確かここから先の大森林のずっと奥にいるとかいないとか。見た事ある人もほとんどいないはずです」

 村長が呟く。


「まぁそうでしょうね」

 俺だって初めて見たからな。

 一体どうしたんだろうな?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 彼女が来てから二時間くらい経っただろうか? 辺りは日が沈みすっかり暗くなった。


「‥‥‥うぅん。‥‥‥ここは?」

「起きた! ティナ起きたぞ。こんにちは、ここはテオドールの村ですよ」


 辺りを見回していたが話しかけた俺と目が合った。

「‥‥‥やっと。やっと辿り着きました。何度ももうダメかと思って‥‥‥」

「まだ回復しきれてない。まだ寝ていた方がいいですよ」

 俺は寝るように促した。


「‥‥‥はい。ありがとう、ござぃ‥‥‥」

 エルフさんは目を閉じるとすぐ寝息を立てて眠りについた。


「とりあえず大丈夫そうですね。エドガー様はお休みになってください。あとはこのティナが看ますから」

「わかった、おやすみ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 結局エルフさんは朝まで起きなかったようだ。

「ティナ、おはよう。結局起きなかったんだな」

「相当疲れているんだと思います」

「今度は私が代わりますよ。ティナさんが休んでください」

 村長が代わってくれるのでティナが休む事になった。


 看病を村長がやってくれるのでいつものルーティンをこなすとしよう。


 村長宅の裏庭を農業試験場とさせてもらい、畑を拡げていろんな作物を作ってみた。


 種はどうしたかって? 先日行商人が来ていろんな作物の種を売ってくれたのだ。


 トマトに似たトメート、パプリカに似たパプリン、人参に似たキロット、玉ねぎに似たオニオニンなど。どれもまだこの村では作られていない作物だ。


 ここで採れたものは全て種を保管する。種をここで増やして村に配る為の施設だ。


 育て方も本からの知識が頼りだ。いろいろ試行錯誤している。

 水をあげて雑草を抜いて。


 次は馬に乗って村の見回りだ。いつもはティナと一緒だけどな、今日は一人だ。


「おはようございます、ジョンさん。腰痛はどうですか?」

「エドガーくん! おはよう。腰はまだ痛いけど休んでもいられないからね」


「無理はしないでくださいね」

「はいよー」



「エドガーさん、おはよう。昨日旦那がフォレストバード獲ってきたから持っていって」

「イレーヌさん、おはよう。ありがとうございます、すごいですね」


「旦那じゃなくてあの銃って魔道具がすごいんだ。助かってるよ」

「銃は清掃が大切ですよ。それとたまにメンテナンスしてもらってくださいね」


 いつもこんな感じで村全体を回るといろいろ貰ったりして結構な荷物になる。なのではっきり言えば貴族時代よりも食べ物には困ってない。


 ぐるっと一周して村長宅に戻ってくるといつもは昼ごはんの準備をしようかって時間になるのだが今日は勝手が違う。


「おかえりなさい、エドガー様。あのエルフの方も目覚めたようです、話を聞きましょう」

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