狐太郎たちの作戦会議

 狐太郎は教室を分断した分厚い氷の壁を、驚きの表情で見上げていた。雪女の雪奈の妖力はものすごかった。雪奈は大きな妖術を使ったというのに、ケロリとした顔で職員室に戻って行った。狐太郎たちの作戦会議が終わるまで戻らないだろう。


 狐太郎は自身のグループを見回した。女が多い。しかもとびきり美しい少女たちだ。残りの少年の悟も、少女とみまごうばかりの美少年だ。彼らを見ていて何だか目がチカチカする。


 だが半妖は見た目ではない、妖力がものを言うのだ。狐太郎は気を取り直して彼らに言った。


「校長の指名により俺がリーダーになった。なったからには必ず相手に勝つ。皆協力して欲しい」


 彼らは狐太郎の言葉にうなずいてくれた。狐太郎もうなずくと、続けて口を開いた。


「皆も気づいているだろうが、敵のグループは俺たちと親しい相手だ。皆相手の能力も、弱点も知っているはずだ。これから自身の能力と、相手の能力の説明をして欲しい」


 最初に手をあげたのは鬼蜘蛛の菊花だ。


「私は蜘蛛になれるわ。糸を出して、攻撃にも防御にも拘束にも使える。それに毒も使えるけど、清姫には負けるわ」


 清姫とはうわばみの半妖だ。毒を使うとなれば注意が必要だ。だが菊花は笑って言った。


「でも安心して?清姫が毒を使ったら、私が糸の網を出して防ぐから」


 狐太郎は頼むと答えた。次は人魚の半妖、みなもだ。みなもはおっとりした性格のようで、ゆっくりと話した。


「私は水を操るわ。地上だとそれほど強力ではないけど。河太郎も私と同じ、水を操れる。後、私の歌を聴く皆眠ってしまうわ」

「音はだめだ。山彦くんに無効化されてしまう」


 みなもの言葉に悟が反論した。山彦とはやまびこの半妖だ。悟の説明では山彦は音を自在に操るらしい。


 次に音子が手をあげて言った。


「はい!あたしは猫になれるわ。それと火の玉を出したり、念力を使えるわ」


 狐太郎はうなずいてから、音子の同室の亜子の能力を聞いた。だが音子は、亜子が空を飛べる事以外は知らなかった。


 狐太郎は最後に悟に質問した。


「悟、お前は読心術が使えるんだな?」


 悟は神妙な顔でうなずいた。狐太郎は悟に自分たちの思考を読んでほしいと頼んだ。悟は再びうなずいてから口を開いた。


「皆、一瞬でいいから、自分の好きな色を思いえがいてくれる?」


 狐太郎たちはうなずいてから目を閉じた。悟に声をかけられて目を開く。悟が読心術に要した時間は一秒もかからなかった。悟は自分のとなりにいるみなもから、時計回りに回答していった。


「みなもちゃんは、海の青色。菊花ちゃんはむらさきとピンクで迷ってたね?音子ちゃんは黄色。ひまわり畑を想像していたね?最後は狐太郎くん。好きな色がないんだね?君の思考は真っ白だった。無、っていうのかな?だから白という事でいいかな?」


 狐太郎は驚いた。悟の心を読み取る速度は恐ろしく早く、狐太郎は色を思い浮かべる時間がなかった。狐太郎はひとり言のように呟いた。


「すごいぞ、悟。お前がいてくれれば俺たちは勝てる」


 悟は驚いた顔をしてから、少し笑った。

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