作戦会議2

 亜子たちは次にどういう戦略で敵チームを倒すかという話しになった。最初に山彦が口火を切った。


「お前たちも気づいているだろうが、このグループ分けは、俺たちがよく知っている相手と分けられている。だからお前たちが知っている敵チームの能力を話してくれ」


 これではまるで山彦がリーダーのようだなと亜子は思ったが、自分では会議をまとめる事はできないので、大人しく山彦にお願いする。


 河太郎が手をあげて幼なじみのみなもの能力を話した。


「みなももオラと同じ水を操れる。だけどみなもも水の中でないと本領の十分の一も発揮できない。だから後方支援になると思う。あ、後みなもは歌が上手いぞ!オラ聴いてるうちに眠くなっちまう」

「河太郎ちゃん。それはみなもちゃんの妖術よ?聴き入ってたら溺死させられちゃうわ」


 清姫が河太郎に注意する。河童がおぼれるという言葉が、河太郎のツボにはまったのか、河太郎は何故かケケケと楽しそうに笑った。山彦が胸を叩いて言った。


「ハ、歌なんて俺の声で吹き飛ばしてやるぜ」


 次に清姫が親友の菊花の妖術の説明をした。


「菊花は大きな蜘蛛になるわ。それに糸を出して敵を捕縛する事もできるの。後、私と同じように毒も使えるから注意してね?」


 亜子はうなった。菊花はやっかいな相手かもしれない。亜子のひざの上に座っている狼牙は元気よく言った。


「コタ、強い。後、狐になれる」

「狐?!可愛い!見てみたいなぁ」

「おお!コタ可愛いぞ?こんなしっぽだ」


 狼牙は自分のお尻を叩くと、狼のふさふさのしっぽが飛び出した。頭には三角の耳も出ている。狼牙の愛らしい姿に、皆目を細めた。狼牙はいつの間にか、クラスのマスコットになっていた。清姫が亜子に聞いた。


「亜子ちゃん。音子ちゃんはどんな妖術を使うの?」

「ううんと、私も音子と知り合ったばかりだからよくわからないけど、可愛い茶トラの猫ちゃんになれるわ!」

「えっ!見たい!」


 清姫も猫が好きらしく、キャアッと声をあげた。それを見ていて山彦が、顔をしかめて言った。


「今は可愛いものの話しをしている場合じゃないだろう。最後は俺の幼なじみの悟だ。おそらく悟が一番強敵だ」

「悟くんて、お父さんがサトリなんだよね?」

「ああ」


 亜子の質問に山彦は深くうなずいた。サトリとは相手の心を読むあやかしだ。亜子は山彦に言った。


「悟くんが私たちの心を読めないように、皆で一斉に心の中で話したら、悟くんは混乱するんじゃない?」

「いや、悟の読心術はそんな生やさしいものじゃない。おそらく敵の中で悟が一番やっかいになる。俺たちが奴らに勝つためには、最初に悟を倒さなければいけない」


 山彦の断定的な言葉に、亜子は不安な気持ちになった。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る