グループ
翌日亜子たちの授業がスタートした。勉強内容は、小学校の頃より格段に難しくなっていた。亜子は必死に、黒板の文字をノートに書き写していた。
教師の雪奈は教え方が丁寧で、わからない生徒がいると、親身になって教えてくれていた。
昼食が終わって教室に戻ると、雪奈が生徒たちに言った。
「それではこれより、あなたたちの力を見るために、五人対五人の戦闘訓練のためのグループ分けをします」
クラス内が一気にざわついた。戦闘訓練とは一体どういう事なのだろうか。亜子は不安になった。亜子は天狗の娘とはいえ、それまで普通の女の子として暮らしていた。天狗の父親は、愛娘が犯罪に巻き込まれてはと、亜子に身を守るための妖術を沢山教えてくれた。
だがそれはあくまでも身を守るためのものだ。他人を傷つけるためのものでは決してない。
となりの音子を見ると、彼女も不安そうに亜子を見つめ返した。雪奈は生徒たちの不安を無視して話しを進めていく。
「グループ分けは校長先生みずからやってくださいました。皆さんグループごとにわかれてください」
亜子たちは雪奈の指示に従った。残念な事に、亜子は音子と別なグループになってしまった。亜子は音子とわずかな時間を共に過ごして、なくてはならない親友になっていた。
音子と離れるのはとても不安だった。後ろの席で誰かがもめていた。狐太郎と狼牙だ。どうやら狐太郎と狼牙もグループがわかれてしまったらしい。子犬から人間の姿になった狼牙は、狐太郎にパーカーを着せられながら、ぐずっていた。
「俺ヤダ、コタと離れるのヤ!」
「狼牙、わがままを言うな!先生の指示に従うんだ!」
泣き出す寸前の狼牙に狐太郎はきつい言葉を投げかける。狼牙は今にも泣き出しそうだ。たまらず亜子は二人の間に入って、狼牙に言った。
「狼牙くん。私も同じグループだからよろしくね?狼牙くん、狐太郎くんと戦って、狐太郎に狼牙くんの強いところ見てもらおうよ?」
「俺の、強いところ?」
「ええ、そうよ?狼牙くんはいつも狐太郎くんの味方でしょ?だけど今回は狼牙くんと狐太郎くんは戦うの。だから狼牙くんの強いところ狐太郎くんに見せてあげられるんだよ?」
「俺!コタと戦う!」
狼牙はやっと機嫌をなおしてくれたようで、亜子に抱きついて来た。亜子は狼牙の頭を優しく撫でた。亜子は一人っ子なので、弟がいたらこんな感じなのかなと思った。
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