森野音子
亜子たちは木造の寮に案内された。生徒たちの荷物は事前に送られているので、亜子は手ぶらだった。
亜子があてがわれた自室に入ると、そこには栗毛の美少女がいた。彼女が亜子のルームメートになるのだ。美少女は入って来た亜子に微笑んで言った。
「あたし森野音子。これからよろしくね?」
亜子は音子の美しさにぽおっとなってしまい、自分が自己紹介をしていない事に気づき、慌てて口を開いた。
「あ、私神羅亜子です!よろしくね!」
「知ってるよ。皆の前で校長先生に名前呼ばれてたもの」
音子は、先ほどの空からの乱入の事を言っているのだろう。亜子は悪びれて頭をかいた。音子はそんな亜子にはとんちゃくせず、瞳をキラキラさせながら言った。
「亜子ちゃん、空が飛べるなんてすごいね!」
「亜子でいいよ。うん、空飛ぶの楽しい。着地に失敗したらタダじゃすまないけどね?音子ちゃんも今度一緒に飛んでみる?」
「・・・。そうなんだ。あたしは遠慮しとくわ。あたしも音子でいいよ」
どうやら亜子のルームメートの音子はとても良い子のようだ。亜子は嬉しくなった。
音子は母親が猫またで、猫またの半妖なのだそうだ。驚いたりすると猫になってしまうらしい。亜子は動物が好きなので、音子に猫になってもらいたいなと考えてしまった。
亜子の物欲しそうな表情に気づいた音子は、顔をしかめて言った。
「あたし猫の格好好きじゃないの」
「ええ~。お願い、音子!」
「もう、仕方ないわねぇ。ちょっとだけだからね?」
音子はそう言うと、シュルッと身体が縮まったかと思うと、姿が消えてしまった。後には音子が着ていたピンクのワンピースだけがあった。その中がモゾモゾ動き出す。ワンピースのえりもとから、可愛らしい茶トラの猫がひょっこり頭を出した。亜子はたまらず叫んだ。
「キャァ!可愛い!」
亜子は茶トラの猫を抱き上げた。猫は嬉しそうに亜子にすり寄った。猫の身体は柔らかくてふわふわしていた。亜子が可愛い可愛いと言って頬ずりしていると、急に猫の身体が大きくなった。
亜子は全裸の音子を抱きしめていたのだ。亜子は驚いて小さくギャッと叫んだ。音子は、失礼しちゃうわとぶつぶつ言いながら素早く下着を身につけると、ワンピースにそでを通した。
猫に変化すると、衣服が脱げてしまうから嫌なのだ、と音子はぼやいていた。
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