第38話 求婚(二度目)
しばらく魔法の練習をしなければ。
ずぶ濡れとなった髪やら服やらを風魔法で乾かしながら、そんなことを考える私であった。
ちなみに風魔法を使ったドライヤーは私の得意技だった。そして、魔力の総量が増えた結果、今までは冷風だけだったのに温風が使えるようになっていた。この点だけはアズに感謝してもいいかもしれない。
いやこれまでの減点が酷すぎて、感謝なんて一瞬で塗りつぶされてしまうのだけれどね。
ともかく。
私とミアは濡れた髪やら服やらを乾かし終わり……改めて、襲いかかってきた獣人さんに向き直った。
ちなみにこの獣人さん。私たちが乾かし終わるまで正座で待機していた。獣人にも正座という文化はあるかい、とか。まるで『待て』をしている犬のようね、とか。そんなことを考えてしまう私であった。
「ガルンド族の族長、ガイル・ガルンドだ。……いや、ガルンドです」
なんかメッチャ畏まられている。まるで借りてきた猫ならぬ犬のよう。
獣人族は血筋よりも強さこそを重視すると聞くし、その理屈だとガルドさんを倒した私は兄貴分――いや、姉貴分みたいな感じになるのかしらね?
さすがに獣人の生態や文化に関する知識はそんなにないのよね。他国との交渉なら王妃が出張ることもあるけれど、獣人族との交渉は専門の外交官というか代官に任せる形だし。
「えーっと、はじめまして。リリーナ・リインレイトです」
私がそう挨拶をすると、
「リリーナ。素晴らしい名前だ。美しさの中にも勇猛さが隠れ潜んでいる」
「あ、はぁ?」
リリーナという名前のどこに勇猛さが? いや獣人族とは文化が違うし、そんなものなのかしら……なぁんて考えていると、
「リリーナ! お前の強さは素晴らしい!」
級に立ち上がったガイルさんが、熱の篭もった声で語り始めた。
「獣人族の分厚い皮膚を貫く魔法!」
雷魔法なのだから皮膚の厚さは関係ないのでは?
「詠唱無しの魔力行使!」
いやしていましたよ? 『
「さらには、味方への被害すらもかまわず敵を排除する覚悟!」
事故です。
いくら私でもそこまで鬼畜じゃないわ。
「俺はお前ほど素晴らしく、美しい女性に会ったことはない!」
獣人の女性すべてを敵に回しかねない発言ね?
「あ、はぁ、ありがとうございます?」
ちょっとドン引きしながらも一応感謝の言葉を述べる私。ガイルさんはそんな私の手を掴み――
「――気に入った! リリーナ! 俺の嫁になれ!」
…………。
………………。
……………………。
おぉん?
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