第37話 アホの子
≪マスターのせいですね≫
容赦のないフレイルの言葉だった。味方であるミアとアズの被雷は私が悪いらしい。
「いやいや、あの獣人さんだけを狙ったんだけど? 力加減の確かさはさっきの山賊制圧で証明されているはずなんだけど?」
≪アズに限界ギリギリまで魔力を吸い取られた結果、マスターの総魔力は激増しています。そのせいで力加減が上手くいっていないのでしょう≫
激増?
いや確かに。魔力を限界ギリギリまで消耗すると総魔力が上昇するという説はあるし、『塔』の魔法使いは日々そんな訓練をしているという噂がある。
でも、そんなの上手くいく方が珍しいし、成功しても1%増えるか増えないかの話じゃないの?
≪人間たちは魔力欠乏症で死なないよう、ゆっくりと魔力を消耗しますから。その分効果も薄くなります。対してマスターはアズによって一気に限界ギリギリ、死ぬ一歩手前まで搾り取られましたので。その効果は抜群だったでしょう≫
いやさらっと『死ぬ一歩手前』とか言わないでもらえません? というかその時ってフレイル自身は壁の隠し金庫にしまわれていたはずなんだけど、見ていたの? 見えていたの?
「う~ん……?」
ものは試し、近くにあった木に雷魔法を打ってみる。枝を一本折るくらいの威力に加減して――
――うわ、
狙った枝どころか、本体の幹そのものが真っ二つになってしまった。なんだこの威力?
って、まずい。被雷した木から煙が出てる。そのまま放っておいたら森林火災になりかねないので水魔法で――
――にゃあぁああぁあああっ!?
木だけを濡らす予定が、ゲリラ豪雨に!? そうか雷魔法の威力も増加されているんだから、水魔法をいつもの調子で使うとこうなるのか!
≪……マスターって学習能力がないというか、アホなのですか?≫
容赦のないフレイルだった。マスターは泣いてもいいですか?
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