第23話 生徒会長

「先生、私達はジュリアを生徒会長に推薦します!」

 学校が始まって依頼の事態に職員室の空気は固まった。


 集まった四十名ほどの女子生徒達、身分、門地、階級などあらゆる壁を超えて、彼女達は職員室前に集まり、ジュリアを生徒会長として他薦しているのである。

 それまで、生徒会長選挙は自薦によって進められていたため、年齢のイカンに関わらず、教師全員が当惑しているのである。


 そうした中、教頭先生が職員室に入ってきて、教師の一人から事情を聞いた。

「実に素晴らしい事だ。

 君達は素晴らしい事を成し遂げようとしている。」

 女子生徒達を褒める教頭先生。

 女子生徒達も、皆笑顔になって喚声をあげる。

「ああ、騒々しくするのは、少し待ちなさい。」

 女子生徒達をいさめ、話を続ける教頭先生。

「それでは、皆さんには推薦状を集めてもらいましょう。

 推薦者の人数は五十名です。

 三日以内に推薦状を集め、私に提出してください。」

「「「はぁ~い!」」」


 女子生徒達は職員室を去り、胸をなで下ろす教師陣をヨソに、教頭先生は深刻そうな顔になっていた。

「自薦ではない生徒会長候補…しかも女子生徒の候補者とは…。

 これは、一波乱も二波乱も発生しそうだなぁ。」

 因みに、この日までに生徒会長に立候補した生徒は、誰一人いなかった。


 ◇ ◇ ◇

「期日までに生徒会長に立候補する生徒はなく、多くの女子生徒の推薦により、ジュリアが生徒会長に選任されました。」

 生徒指導の主任教員の報告を受け、当惑する校長と教頭。

「わ…分かりました。」

 教頭がそれだけ答えれば

「最終判断は、こちらで行います。」

 校長もやっと答えるに留まった。

 主任教員も戸惑いながらも深々と頭を下げ、部屋を出るのだった。


 暫くの沈黙を置き、教頭が切り出す。

「どうしましょうか?」

「そうだなぁ…。

 ここは素直に生徒たちの意向を汲むべきではないだろうか?」

「しかし…それでは、貴族院や辺境伯の御威光などにも影響が…。」

 校長の提案に躊躇を示す教頭。

「はっはっは、それは検討事項ではあるな。」

 カラカラと一頻り笑って真顔になる校長。

「面白いじゃないですか。

 果たしてどれ程のがあるんでしょうねぇ?」

「こ…校長…。」

 教頭は青い顔になるが、校長は何故か上機嫌になるのだった。


 それから三日後の全校朝礼にて…

「今年の生徒会長は、ジャクリーンさんに決定しました。」

 校長の発言に、割れんばかりの拍手が巻き起こります。


「ジャクリーンさん、こちらに。」

「はいっ!」

 校長に促され、凛とした返答をして演壇に進み、ゆっくりと縁台に上がると、校長先生の横に立つジュリア。

「ジャクリーンさん、新生徒会長として、挨拶なり、抱負を語って下さい。」

 そう言って、校長は一歩下がる。

 生徒たちの拍手に迎えられて、ジュリアは演壇の中央に立った。


「私はジャクリーンと申します。

 この度、皆さんの推薦を受け、生徒会長を拝命しました。…」

 ジュリアの生徒会長の就任挨拶が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る