第19話 オテンバ娘
「こぉ~~らぁ~~あ~~~っ!
ジュリアぁ~っ!
どぉ~~こぉ~行ったぁ~~っ!」
アビーの怒鳴り声が家中に響き渡ると、中庭への扉を開き、泥だらけに下着姿のジュリアが飛び出してくる。
中庭では素振りの鍛錬をしている
レイを見つけると、迷わず抱き着くジュリア。
遅れてアビー登場!
こちらも下半身泥だらけ…。
「ジュリア…ナニをやったんだい?」
抱き着いている
「…おままごと。」
「ほうほう…それで?」
レイがジュリアに質問していると、アビーも傍にやってくる。
「お団子を作って、ママのところに持っていったの…。」
「ほうほう…それで?」
段々下に俯向き始めるジュリア。
語りかけようとするアビーをそっと制止、アビーへウィンクするレイ。
「ママにお団子を渡そうとしたら…
ママの手が泡泡だったから…」
ジュリアが小さく震えている。
レイはゆっくりとジュリアの頭に手を置いた。
「ママが病気だと思ったの!
だから…。」
ジュリアが泣き出してしまうと、アビーが慌ててジュリアを抱きかかえる。
アビーは何かを悟ったのだろう…ゆっくりとジュリアをあやしだす。
「ジュリア…ママは大丈夫よ。
お洗濯をしていたから、手に泡がついていたのよ。」
「…お…おせん…たく?」
笑顔のアビーに怖ず怖ずしながら応えるジュリア。
「ええ、そうよ…。」
アビーはゆっくりとジュリアの顔を覗き込む。
「ジュリアは、お洗濯のお手伝いが出来るかなぁ?」
すっかり笑顔のアビー
「で…出来るもん!」
ちょっと不貞腐れ気味のジュリア。
「とりあえず、二人共お風呂に入ってこぉ~~い!」
「「はぁ~いっ!」」
レイが檄を飛ばすと、アビーはジュリアを抱えて家に戻って行った。
「…魔物は敵対するものではない。
ジュリアがソレを理解してくれる日もきっと来るだろう。」
そう独り言ちると、ドルイド法国へ続く空を愛おしそうに眺めるレイだった。
…のだが
「こぉ~~らぁ~~あ~~~っ!
ジュリアぁ~っ!
どぉ~~こぉ~行ったぁ~~っ!」
再び家中に響き渡るアビーの怒鳴り声
「ふ~~ん、これは…あれだな。
ジュリアのお転婆が修まらないことには…このドタバタは収まらないな…」
アビーの怒鳴り声に、家の方へ視線を移し、苦笑するレイ
彼の眼前には、タオルを巻いた姿のアビーが、スッポンポンのジュリアを追いかけ回している姿が見えている。
アビーとジュリアの髪を見る限り、二人共まだお風呂には入っていないようだ…。
「まぁ、当初の杞憂は無くなっているようだし…。
オレもお風呂に入るとするか。」
家の方に歩み始めるレイ。
そんな
「パパ…
ママといっしょにお風呂入るの怖いから、パパもいっしょにお風呂入って!」
「ああ、そうしよう。」
ジュリアを肩に乗せ、アビーの元へ歩み寄るレイ。
「もうっ!
レイは、ジュリアを甘やかせ過ぎです!」
不服そうなアビーの頭に優しく手を置くレイ。
「まぁまぁ、そう言わないの。
それに、お前といっしょにお風呂に入れるというのは、オレも嬉しいんだぞ。」
レイの返答に赤面するアビー
「ああ、ママが赤くなったぁ!」
ジュリアまで茶々を入れだす。
そう、ありふれた家族の風景がそこにはあった。
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