第27話 エンドアバイソン防衛戦
サンドラプトルを狩って意気揚々と引き上げてきたところに凶報はもたらされた。
「マジかよ……」
報告を聞いた俺は焦った。全部で200頭もの大型モンスターの群れが、ハロウィン村へと迫ってきているのだという。それはもう移動などというレベルではなくこの村への突撃らしい。
すぐにみんなと話し合って作戦を立てる。
ハロウィン村めがけて突進して来ているのはエンドアバイソンという大きな群れを作るモンスターだった。
不思議なもんでモンスターにもある程度の生態系があり、エンドアバイソンは草食らしく人間は食べないらしい。
ただマナの豊富な植物を狙うので、畑の作物は確実に食べられてしまう。さらに、大食いなのでエンドアバイソンの群れが来るとわずかな草も食べ尽くされ、エンドア砂漠の広がる一因になっているらしい。
そんなエンドアバイソンが200頭、砂煙を上げて猛進してきてる。200頭なんてちょっと多すぎて想像もできないような規模だが、エンドアバイソンの群れとしてはこれでもごく小規模らしい。
誘導も進路の変更も不可能。迎え撃つしかないと決まった。
カヅノさんが村周辺の地図を示しながら話す。
「エンドアバイソンは東から、まっすぐこの村を目指して走っています。バイソンたちはかなり密集した群れを作るので、色々な方向から村を襲うということはないでしょう。防衛はこの東側を固めれば済みます。ただその分群れの突破力は凄まじいものになりますが……」
「防壁や柵を作っている暇はないな。よし、東側の畑は捨てる。畑の作物全部に灰をまいて使い魔化して、迎え撃とう」
「……よろしいのですか?」
「どうせ迎撃に失敗すれば作物は食べられちまうんだ。なら出し惜しみしない方がいい。それに、村には絶対に侵入させる訳にはいかないからな」
村には俺の育てた樹木で少しずつ木造の家が建ち始めているが、まだ大半はテントだ。大型モンスターに来られたらたちまち踏み潰されちまう。
俺はさっそく東側の畑の作物をすべて使い魔化した。畑の周囲に植えていたナツメヤシは
ナツメヤシは日差しよけ兼防柵代わりとして畑の周囲を囲むように植えていた。100本以上のナツメヤシがトレントとなり、最初の防衛線として陣を敷く。トレントで作った防御壁だ。
トレントの裏には植物モンスターの巣窟となった元畑が広がる。ここを主戦場にパーティーと戦闘班は戦う。
ウサに頼み地下に穴を掘って塹壕のように俺たちが隠らられるスペースを作ってもらった。相手は突撃してくるバイソンだから、ひとまず穴の中に逃げ込めば攻撃は避けられる。
図にするとこんな感じだ。
エンドアバイソンの群れ
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木木木木木木木木木木
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木…トレント
▓…使い魔化した植物モンスター
◯…攻撃用の丸穴
迎え撃つ準備はバイソンが来る前になんとか完成させられた。タイガさんたちがいち早く報告してくれたおかげだ。
戦わない村人たちは、村の奥に避難してもらっている。一応その周囲にもトレントを配置して守っているが、正直そこまで侵入されたら終わりだろう。
戦いを前に、俺はみんなを集めた。
「やれるだけのことはやった。こうなったら腹くくるしかねえ。みんな、全力で村を守るぞ」
「「「おう!」」」
タイガさんをリーダーとする戦闘班の人たちは力強い表情で頷く。村の将来がかかっているから当然だろう。
対してハロウィンパーティーのメンバーはいくらか緊張していた。
「200頭って、すごい数だよね」
「今日のサンドラプトルが20頭弱でしょ。あの10倍かあ……」
「エンドアバイソンって、毛皮がかなり頑丈でヒットポイントも高いらしいよ」
「ぼくたちだけで、倒しきれるでしょうか……?」
うーん、仕方ないんだがみんな浮かない顔だな。
まあ、200頭のモンスターといきなり戦うことになったんだからしょうがない。俺だって怖い。
どうするか、と考えて、俺はあることを思い出した。
「ああ〜、お前たちのやる気が出そうな一言を告げる」
「なになに? これでがんばったらおにーさんがデートしてくれるとか?」
「一日あたしの下僕になるとか?」
「どっちも違えよ、ウサ、燕。……こほん、カヅノさんから聞いたんだが、エンドアバイソンの肉はかなりうまいそうだ。牛肉に近いらしい」
「「「……へえ」」」
その瞬間、全員の顔つきが変わった。
「それは、がんばらないわけにいかないよね」
と、ウサ。
「ステーキ、ローストビーフ、すき焼きにしてもいいわね」
と燕。
「焼かないほうがいいのかな? ウインドカッターとかの方がいい?」
と鈴芽。
「お肉楽しみ……」
「牛丼……」
と、みぞれと夜釣。
牛丼か、俺も食いたいな。米はたんまりあるし。
「よっし、それじゃあ防衛戦始めるぞ! バイソン狩りじゃあ!」
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