第61話 日常は突然に

「――――しっかし依頼人来ないわねぇ~......私の女神パワーちゃんと効いてるのかしら?」


「なんのはなしだ?」


 なんだろう! 既に嫌な予感しかしない!!


「あれ? 言ってなかったっけ? トラブルが舞い込んでくるようにする女神パワーをここ手に入れてから使ったって」


「初耳だなァ!!」


 それがマジならルークに絡まれた件より後の話はこのパワーのおかげせいという事になる!


 コーガザスとの戦いからおよそ一ヶ月。至って平和そのものだ......


「それってさ、何も無い平和期間が長ければ長いほど次のトラブルが反動でデカくなるなんて事ないよね?」


「まっさかぁ! そんな事あるわけないじゃない!!......絶対? 多分? 恐らく? そんな気がしないでもないかも......?」


 使った自分でもわかってねーんだな!


「でもアレよ! トラブルを解決するとご褒美が貰えるの! もしデカい反動が来てもそれだけ大きいご褒美が貰えると思えば――――」


 ここまで言いかけてプリメーラは思い出したのだろう。


 ルークと戦った時はトウヤがお昼を奢って貰っただけで、自分には何も無かった事を。


 ライが来た時は“契約”と人の壁についてトウヤが情報を得ただけで自分には何も無かった事を。


 ヴィフラムの襲撃時は、自分はそれらしいフリをしただけでご褒美らしいご褒美は処理に困っている大量の蜂蜜であった事を。


 トレジャーハントでは、トウヤが新技を披露したり魔王に配下ができたりと色々あったが、自分には特に何も無かった事を......


「報酬が......報酬がしょっぱい!!」


「急にどうしたプリメーラァ!?」


 プリメーラは爆弾で狙撃されたかのように跳ね、のけぞり、その場に涙を流しながら倒れた。


「私......驚いて回復してコーヒーしか作ってない......」


 プリメーラの記憶が、走馬灯のように蘇る。だが大したことしていないのが余計に己の精神にダメージを与えてしまった。


「ミ゚!?」


「トウヤ! プリメーラが死んだ!」


「安心しろ気絶しているだけだ!!」


 今、若干俺じゃないナレーション的なのが流れた気がするが......気のせいか......


「まぁ何はともあれ! いつ何時どんなトラブルが来ても大抵の事はぶっ壊して解決するのが壊し屋だからな!」


 その瞬間、外からけたたましい警報音と、魔法通信の呼び鈴が爆音で流れ始めた。


 受話器を手に取り、聞こえてきた声はルークのものだった。


『壊し屋か。今の警報音は聞こえているな?』


「聞こえてるさ。なんだよこれ」


『お前、いますぐ警備局に来い』


 ルークの声は普段以上の威圧感を孕んでいて、その言葉には一切の遊びが無かった。


「今すぐって......この警報音と関係あんのか!?」


『ある。最悪の場合......街の人間が全員死ぬ』


「まじかよ......」


 反動が来た。その瞬間だった。

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