第53話 わくどき!? トウヤ秘密の特訓①
俺とフィンとの間で今! 熾烈な争いが繰り広げられていたッ!!!!
「――――おしえろ」
「......だめ」
「おしえろ!」
「だめったらだめ!」
「おしえろトウヤァァァァ!!!!」
「駄々こねたって無駄だって言ってんだろ!?」
フィンは仰向けに寝そべり手足をバタバタとさせているが無駄である。俺の意思は固いのだ。
「――――朝っぱらからうるさいわねぇ......何事?」
「ミ゚ィ......」
俺達が騒いでいたからだろう。寝室からプリメーラとショクが大きなあくびをしながらこちらへ来た。
「プリメーラ! トウヤがこっそり外へ行こうとしてた! これはわるいことをしているにちがいない!」
「トウヤまじ? ひくわァ......」
「だから違うって言ってんだろ!?」
「じゃあ教えるくらい良いじゃないのよ......」
「むぅ......」
プリメーラに押される形で、俺は今まで隠していた秘密を話すことになったのだった。
「――――鍛錬だよ鍛錬!」
「「たんれんん~?」」
「なんでそれを私達に隠す必要がある訳?」
そりゃもちろん理由はある。
「いや、だってほら......」
俺はプリメーラの目線を促すようにフィンを指さした。
「我もつれてけつれてけつれてけぇぇぇぇ!!!!」
「こうなるから嫌だったんだよ!」
そこにいたのは、さっきよりも手足のバタつき具合が三倍(当社比)になったフィンだった。
「トウヤの目的はフィンを強くする事なんだから連れてってあげれば良いじゃない――――私今なんて言った......?」
勝手に言って勝手に頭を抱えるプリメーラを尻目に、俺はまぁ......一応考えを改めたのだった。
「じゃあフィン。俺の鍛錬に着いて来るか?」
「おお! うん!」
フィンは駄々をピタりと止め、すぐさま外行きの準備を嬉々として始めた。
「プリメーラも来い」
「えぇ!? 私疲れるのヤダ~」
なんとなく。なんとなくプリメーラも連れて行きたくなったので、引き摺って連れて行くことにしたのだ。
◇◇◇◇
ファストレア外!
「――――という訳で、俺の朝の日課である鍛錬体験コースへようこそ」
「我もつよくなれる!?」
「ミ゚!」
「なれる!」
フィンとショクはやる気満々で目がキラキラと輝いている(ショクに関しては目がどこか分からないが)
それに比べてプリメーラは......
「めんどくさいぃ~」
やる気が無さすぎて溶けている。ショクよりも液体化して、地面に染み込みそうな程だ。
「これが終わったら、朝メシでも食いに行こうか! 俺の奢りで――――」
「ぐぁんばるわよぉぉぉぉ!!!!」
うん、食い気味にだがプリメーラもやる気を出してくれて良かった。
「で、何をやるの?」
「ランニング。確かファストレアの外周が5キロ位だから、それを3周な」
「は!!?!?」
いつもなら10周は軽く走るんだが、プリメーラはともかくフィンがやるのだ。これくらいが丁度良いだろ。
「ショクは俺の頭の上な」
スライムに走るとかの概念ないだろうし、これで良いだろ。
「じゃあ、行くぞ――――よーい......」
「ミ゚ッ!」
三人がショクの合図で走り出す。
トウヤは合図の瞬間「ドン!」と爆発音のような蹴り出しを決め、その後も轟音と共に空気を引き裂きながら超速で走り抜けて行った。
「はっや......よく身体無事ね」
「我もがんばる!」
プリメーラはさっきのやる気をどこへ忘れて来たのか気だるげに、フィンは勢い良く元気に走って行く。
途中、二人の間を風が二回程通り抜けたような気がしたが、特段気にはしていなかった。
「――――3周おーわりっと!」
「でぇ早!? まだ一分くらいしか経ってないわよ!!?」
「トウヤ! どうやったらはやくはしれる!!?」
「体の使い方と慣れ......かな? まあ続けてる内に早くなるって!」
そして、フィンとプリメーラが走り終わる頃には日がすっかり昇っていた。
「アンタ......これ毎日やってるの......?」
「つよくなった......きがする!」
二人共大きく肩で息をしているが、グロッキーなプリメーラと変にスイッチが入ってしまったフィンとで反応は対照的だった。
「よし! じゃあ準備運動はこれくらいにして、鍛錬を始めるぞ! 森へGO!」
「ま......まだ始まってすらなかった訳ぇぇぇぇぇぇ!!!!......――――」
俺が右手を天に掲げそう言うと、プリメーラが今日一番の叫びをあげた。
後半へ続く。
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