第38話 あ! やせいの まものが あらわれた!①

「金貨1200枚欲しいかぁぁぁぁー!?」


「「欲しぃぃぃい!」」


「大森林のヌシを捕まえたいかぁぁぁぁー!?」


「「捕まえたぁぁぁい!!」」


「私についてこぉぉぉぉい!」


「「うぉぉぉぉぉ!!......」」


「そういえばなんでプリメーラが音頭とってんだ?」


「ノリよ」


「それならしょうがない」


「はやくいこ! いちばんに我がつかまえるの! おかしがいっぱい!」


――――という訳でやって来ました“ファストレア大森林”! 広さは東京ドームが沢山入るくらいでめっちゃ広い! こんな中からヌシを探すなんて無理ゲーだろ!! 

 

 否! 探すのだ! だから金貨1200枚(約1億2000万円)も貰えるのだ! 


 初めての依頼人はやばい犯罪者だったし爆散したしで結局依頼料は貰えず仕舞......借家の為家賃も払わねばならんし、何より明日食べる飯もギリギリな状態!! ここで何としても纏まった金を稼いで置かなくては魔王を最強に育てる前に野垂れ死に確定なのだ。よってこれは死活問題なのであるッ!!


 こうして壊し屋さんの退路の無い行軍が始まった。


 森の中は危険が一杯。当然、ヌシではない魔物も大量に存在する。


――あ! やせいの スライム が あらわれた!――


 スライム......水色半透明のなんかよく分からん魔物。大森林の魔物の中では最弱とされている。


 当然こんな事もある。だが! これはフィンを強くする為の絶好のチャンス!


「いけぇフィン! まずはスライムじゃぁ!!」


「おーう!」


 フィンはやる気満々にスライムの前でポーズを取る。


――フィン の こうげき!――


「パンチぃぃぃ!」


(............)


――スライム に こうかがないみたいだ...――


 フィンの放った渾身のストレートは、ぶにん! と跳ね返されてしまった。当然スライムにダメージが入った様子は無い。


――スライム の いかく!――


(しゅーっ!!)


「!?!?」


 攻撃を弾かれてふらつくフィンの目の前で絨毯よろしく面積を広げたスライムが驚かす!


 ただ驚かせただけ。ただ驚かせただけで実害は無いのだが......


「びぇぇぇぇぇ!!!! でっかいぃぃぃぃ!! こわいぃぃぃぃぃ!!!」


――フィン に こうかはばつぐんだ!!――


「落ち着け面積がただ広くなっただけだ!」


「でも......きゅうにわっ! て......」


「最初からスライムはちと強過ぎたか?」


「最弱の魔物よ? それ本気で言ってるの?」


 座って眺めていたプリメーラが突然の突っ込み。いや、俺もそう思うけど......死にかけのセミとトントン位ならまず生きたセミと対峙させるべきだったかな~って話なのよ!


「良い? フィン。スライムに物理攻撃......トウヤがいつもしているようなパンチとかキックは効かないわ......あとは自分で考えなさい」


 おお、的確なアドバイス......


「魔王育てるのは反対じゃなかったっけ?」


「ここでこんなに時間取ってたら大森林のヌシ探しに行けないでしょ!?」


 ごもっともです!!


「パンチとキックがきかない......わかった! プリメーラ、ありがとう!」


「なんであんたまで呼び捨てなのよ......」


「はぁぁぁぁ......」


 フィンの全身に魔力が満ちる。


 そうだよ! 物理攻撃が効かないなら魔法で倒せばいい! よく気が付いた!!


 フィンのスライムを倒す、かいしんの一撃が繰り出された。

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