第26話 インスタンスインスタントコーヒー!

 ファストレア緊急警備局(通称ファッ急ってなんだよ)のルークおよびライとの戦闘から数日が経過した!


 そして異世界壊し屋の俺達はッ!! 絶大な危機に直面していた!!


「トウヤ! 我は遊びにいってくる!」


「おー、知らないおじさんには絶対について行くなよー」


「うん! 行ってくるのだ!」


 魔王のフルパワー開閉でまた蝶番が破損する音がした......元気だねぇ......あの元気はどこから来るのか、羨ましい限りだ。


 それとこれとは別なので帰ってきたらお説教だな。


「トウヤ? コーヒー淹れたけど飲む?」


「お、サンキュ」


 めっちゃ可愛い女の子がコーヒーを淹れてくれる......前世の俺からは想像も出来なかった贅沢......なのだが!


「なんでインスタントコーヒーがここまで不味くなるんだよ!? 『インスタントよ? これが不味いことなんて天地が運命的な出会いを果たして四次元外郎ういろうに乗ってイスカンダルへ行くくらい有り得ないわw』とか言ってたよな!? おもくそ不味いじゃねぇか!!」


「ちゃんと作り方の通りに作りましたー! ちょっと一口頂戴――――まっず!! なにこれ!? 呪いでも入ってんじゃないの!?」


 自分で作ったコーヒーなのに、自分でそのマズさにキレてカップを床に叩きつける女神の図。


「良く、もう一回よぉーく作り方を確認しよう......さっきと同じ手順で作れるか?」


「アンタ、暇なの?」


「暇なんだよ仕事がねーから!! 分かったらやるぞ!」


「めんどくさぁー......」


――――


 女神様の! 1分クッキング!


「という訳で今日は簡単インスタントコーヒーの作り方を解説していくわよ!」


「え!? ちょっと待てプリメーラ! なんか聞き覚えのあるあの音楽が流れてるぞ!?」


 キッチンに響くのは、3分で料理が出来上がる料理番組のあのBGMだ......え怖!?


「あー、女神パワーよ!」


「すげぇーな女神パワー!」


「――気を取り直して、まずはお湯を沸かします。沸かす前のお水は魔法で出した物だと雑味があるので、しっかり自然のお水を使ってね!」


「ちょっと本格的じゃんか......」


「沸騰したお湯がこちらにあります。これは時短のために今速攻魔法で生成した物よ!」


「じゃあダメじゃねぇか!! さっきまでのお前の発言なんだったんだよ!!」


「そして肝心のインスタントコーヒーの素ですが、よく考えてみたらそんな凄い代物この異世界には無いので、それっぽい黒いつぶつぶで代用します!」


「待て待て待て待て!!!! なんだよそれっぽい黒いつぶつぶって!? え!? あれコーヒーですらないって事!? じゃあなんなんだよこの黒いつぶつぶ!!」


 見た目はインスタントコーヒーのそれよりちょっと色が濃い位しか違いがない......だが明らかに顔があるしなんか呻き声をあげている!!


「毒は多分無いから安心なさい!――――大体トウヤがもう一回作れって言うからこっちだってやってんのに一々デカい声出さないでよ鬱陶しいわね!!」


「お、おう......すまん......」


 なんで俺がキレられてんだ?


「という事で一先ず完成です! どうトウヤ? 味見なさい!」


 なんか材料見せられた後だと怖いな......だが俺が作ってと頼んだ手前、一口は飲まなければ......


 ッ――――!?


「普通のちょっと不味いコーヒーだ......」


「でしょ!? どうよ! 私のコーヒーは!」


「いや、じゃあなんでさっきはあんなに不味かったんだ――――」


「あ、ちょっと待ってトウヤ。入れ忘れてたものがあったの」


「なんだ?」


「私の愛情よ!」


 !!?!?!?!?!!?!?!!!?!?


 プリメーラの手で作られたハートから!! 明らかに怪しい謎のオーラが見えるッ!!


「やっ......ヤメロォォォォォ!!!! をカップに近付けるんじゃあねえッ!!」


 謎のオーラはドロドロになり、コーヒーと完全に一体化してしまった......


「この私の愛情で何倍も美味しくなるのよ――――不味い......なんでぇ......」


 プリメーラは口に含んだ瞬間、口の締まりが悪くなったのかえろえろと垂れ流した。


 プリメーラには、愛情と称した謎のドロドロ禁止令が発令されたのだった。


「――――あの!!」


 毎度の事だがグロッキーになったプリメーラを布団に運んでいると、何度も俺を呼んでいたかのような大きな声が玄関から響いた。


「すみません、少し立て込んでまして......」


「ここ、壊し屋さんですよね? 依頼があって来ました!」


 初めての依頼人がそこには立っていた。

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