第5話 初めてのSランクダンジョン
さて、angel_bloodは、碧界の提案する共同攻略の話を受けるだろうか。まずはそこからだ。
angel_blood:ステラブランドさん、碧界さんから、共同でSランクダンジョンを攻略しないかという話が来ました。あなたが納得しているのなら、受けようと思います。
ステラブランド:なら、俺は問題ないです。
angel_blood:分かりました。では、明日に一度集まりましょう。
ステラブランド:はい。それで、配信はしますか?
angel_blood:そうですね。せっかくですから。
ということで、俺たち三人でSランクダンジョンを攻略する姿を配信していくことになった。碧界は、ダンジョンに挑めるのなら何でも良いらしい。
正確には、後に続く人間のために攻略情報を残せるから、配信しているくらいの方が都合が良いのだとか。
やはり、碧界の熱意は本物だよな。自分だけでなく、皆がSランクダンジョンを攻略できるように、全力なんだ。本気で、人類の発展を考えて、そのために行動している。そこは、尊敬できる。
ただ、無理やりSランクダンジョンに挑ませようとする所だけはいただけない。悪人ではないのだが、良くも悪くもまっすぐ過ぎる。自分の使命を素晴らしいものだと、それに共感するのが当然だと、偏った考えをもっているんだよな。
まあ、どうせ関わってしまったのだから、少しずつでもお互いに妥協できたら。俺はRTAが中心だし、angel_bloodも人類の為なんて考えていない。そこを、納得してもらえたら。
俺だって、碧界の考え自体は素晴らしいと思う。押し付けないでほしいだけで。だから、敵対したい訳じゃない。
まあ、急ぎすぎても良くない。碧界の考えを否定すれば、余計に頑なになるだけだろう。だから、まずは普通に接するだけだ。
ということで、Sランクダンジョンに挑む日がやって来た。予定通りに、配信もやっていく。
「今日は、Sランクダンジョン、『試練の洞窟』をangel_bloodさんと碧界さんと攻略していくぞ」
ノブナガ:結局、協力することになったのか。
止まり木:三角関係ですか?
「色々あったのよね。まあ、あたしにとっては都合が良いんだけど」
「私としては、Sランクダンジョンを攻略できるのなら」
angel_bloodも碧界も、恋愛系のコメントはスルーしている。まあ、回答してもめんどくさいだけだものな。
それよりも、『試練の洞窟』がどんな感じなのかだ。戦闘だけを行うダンジョンだというのは知っている。だが、そこまで情報を集めていないんだよな。というか、決まったのがさっきだから。経験者がいるダンジョンが無難だろうと。
「前置きも面倒だから、さっさと入っていくことにするか。パーティって、どうやって組むんだったか」
「パーティ申請を送るから、受けてもらえれば良いわ。簡単な話よ」
「ステラブランドさんは、これまでずっとソロだったんですね」
「ああ、そうだな。完全に個人でダンジョンに潜ってきたから、連携は怪しいぞ」
mist:通常攻略を見るのも、たまには面白い。
fallen:Sランクダンジョンは特別な感じがして、見ごたえがある。
実際、Sランクダンジョンは特別だよな。だから、angel_bloodも碧界もこだわりを見せている。俺にとっての興味はRTAだから、実感は薄いが。
いずれ、Sランクダンジョンを周回できるようになったなら、RTAを走ってみたいという気持ちはある。俺が生きている間に実現するのかは、気になるところだが。
パーティ申請がangel_bloodから送られてきて、ふたりとパーティを組んでいく。そして、ダンジョン入り口の門から侵入していった。
そこは、いわゆるコロシアムのような感じだった。モンスター達と俺達が向かい合っているだけで、ギミックらしきものは見当たらない。
angel_bloodが言った通りに、戦闘だけを繰り返していくのだろう。始めに出会ったモンスターは、黒い虎のような感じ。爪と牙が鋭くて、とても危険そうだ。
構えた頃には、こちらに向けて駆け出していた。間違いなく、逃げることができない速度で。
「クルーエルタイガーよ! そこらのボスより強いわ!」
俺は剣と盾を、angel_bloodは大剣を、碧界は槍を構えていく。俺が前に出て、敵が爪を振り下ろすのを盾で弾き、それに合わせて2人が攻撃していく。
2人とも、うまく俺を壁にしつつ武器を振っていき、順調に敵を倒すことができた。まあ、5分くらいはかかったのだが。ただの雑魚1匹に。
ノブナガ:いつもの『静寂の森』とは全然感覚が違うな。それでも勝つステラブランドは化け物。
mist:なんだかんだで上手くて笑っちゃう。
「初めてにしては上々ね。あたしがソロの時は、こいつ相手に何回も死んだものよ」
「Sランクダンジョンですからね。何度も死んでからが本番ではあります」
ソニック:Sランクダンジョンに挑むやつ、感覚がおかしい。
まあ、何度も死んでからが本番と言われる場所は、相応に厳しいよな。遊びだと考えても難易度が高いが、痛みに耐性がないのなら、相当しんどいだろう。まあ、俺は平気だろうが。死ぬのには慣れている。
続けて攻略を進めていくと、ボス部屋にたどり着く前に何度か死んだ。クルーエルタイガーは何度でも簡単に倒せたし、一度突破したモンスターで二度目に死ぬこともない。
だが、初見のモンスターでは死ぬ時もあった。angel_bloodは経験者とはいえ、誰かが死んだら全員がダンジョンから追い出されるからな。
そして、ボス部屋では大きなライオンが待っていた。たてがみがあるし、オスだろうか。全長が5メートルくらい。人間3人分くらいだな。攻撃が直撃したら、死んでしまうだろう。
秋茜:思ったより死んでなくてビックリ。
ノブナガ:ステラブランドは天才だから。
「1層ボスは、キングライオンよ。あたしも、安定して攻略はできないわ」
「Sランクダンジョンのボスをソロで安定して攻略できる人は、居ないんじゃないですか?」
「何でも良い。とりあえず戦えば良いんだろう」
ということで、戦っていく。俺達が構えるより先に、敵の方から突っ込んできた。連続で前足を叩きつけてきて、盾での防御が追いつかない。そのまま一撃を受け、死んでしまった。
「あー、死んじゃったな。Sランクダンジョン、難しいものだな」
「そうですね。ですが、パターンを覚えていけば、勝てるはずです」
「あたしも、100回くらいは死んだもの。すぐには突破できないと思うわよ」
リンゴ:ありましたね。初回攻略配信の時。
ソニック:平気で100回死んだとか言うの、やばすぎ。
俺は少し不安になっていたのだが、案外簡単に攻略できそうだった。一撃受ければ死ぬというプレッシャーはあるものの、基本的には単純な動きだ。
9回目の挑戦で、かなりの手応えを得る。ということで、今回で突破するつもりで、気合を入れていった。
「さあ、今回で決めるか」
「そうね。十分チャンスはあると思うわ」
「勝ちの目は、相応にあるでしょう」
ノブナガ:見るからに動きが良くなってるの、走ってる時と同じだな。
リンゴ:パーティを組むだけで、ここまで違うんですね。
ということで、ザコたちを倒してキングライオンのところへと戻ってきた。相変わらず、とても大きい。
俺は防御に専念して、angel_bloodと碧界が攻撃していくという形を取っている。まずは、敵が突っ込んできて連続で前足を振り下ろしてくる。
方向的には、右、左、上、左、上、上の順で両足が交互に飛んでくる。パターンを覚えているので、ただ盾で受けるだけでいい。そのスキに、angel_bloodが大剣を、碧界が槍を叩き込んでいく。
次いで、大きく回りながら前足と後ろ足で攻撃をしてくる。それを受け止めると、2人が大技を叩き込んでいく。
「あたしからね! 【大山鳴動】!」
「私も続きます。【画竜点睛】!」
angel_bloodが全身で大剣を振り下ろし、碧界が渾身の突きを放っていく。敵は大きなダメージを受けているようで、うめいている。
それから、今度は敵は噛み付いてくる。牙を避けつつ、口に盾を合わせていく。また、2人が攻撃していく。
同様のパターンを30分ほど繰り返し、ようやく敵は倒れていった。
ノブナガ:こんなに早くボスを倒すの、やはりステラブランドは化け物。
sword|mana:感動しました!
「攻略できたし、今日のところはこれで終わりだ」
「そうね。2層まで挑むのは、無理があるものね」
「慎重に行きましょう。焦っても、良いことはありません」
ということで、各層にある脱出用の門から、もとの世界へと戻っていく。
配信を終えても、まだ俺達は解散していなかった。そこで、今後の方針について話そうとする前に、碧界から声をかけられる。
「ステラブランドさん、それほどの実力があって、なぜRTAなどしているのです」
「決まっている。世界で一番になるためだ」
「そんなことで? ……ステラブランドさん、私と戦っていただけませんか? 対人専用のダンジョン、ありましたよね?」
そう言いながら、碧界は槍を突きつけてくる。厄介な展開になってしまったな。
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