美少女幼馴染たちとはラブコメにしたくない!〜学園三大美少女と呼ばれる幼馴染三人から好意を寄せられているけど、関係を壊したくはないので手は出しません〜

リヒト

序章

プロローグ

 とある日の放課後。

 

「恋と性欲の違いは何だろうか?諸君」

 

 高偏差値の高校の既に女子が全ていなくなった教室においてとんでもなく馬鹿みたいなことを口にする男子が一人。

 

「あー、そうだなぁ」


「それはあまりにも難しすぎる問いだ……」


「……むむっ。神でさえも答えを出すのが難しい問いを」


 そんな男子の言葉に教室へと残るクラスの全男子たちが頭を抱える。

 

「僕にはわからない……このあまりにも難しい問いに答えなんてだせない」

 

 黒髪黒目。

 顔としては凡よりは中々に上であり、低い背丈も相まって美少年とギリ言えるような少年は自分と同じクラスの男子たちに囲まれながら声を張り上げる。


「われ思う。ゆえに悩む。恋と性欲の違いとは何か。欲しているのは彼女ではなく自分だけのセフレではないかと」

 

 美少年はその顔と背丈に似合わないとんでもなく下衆なことを口にする。


「女の子と付き合うか否か!?大好きな彼女か否か!だが、その前に目の前におっぱいがあれば!女優やアイドルの裸があり、誘っていたら……それにむしゃぶり付かないのは男として何か間違っているぅ!!!彼女よりおっぱい!!!おっぱいしか勝たん!おっぱい!!!」

 

 男子高校生の頭にあるのなどおっぱいだけだ。

 煩悩しかないことをさも感動的な演説かのような身振り手振りでもって告げる少年。

 だが、その少年にこの場にいるすべての同意する。

 陽キャも陰キャも、心が一つに重なる瞬間である。



「僕はどうすればいい!?自分に好意を寄せてくれている三人の幼馴染にどう向き合えばいい……ぶっちゃっけ僕はあの三人全員のおっぱいを揉みたいよぉ!巨乳も貧乳も、張りのあるおっぱいも垂れ下がったおっぱいも!そこに優劣はないぃ!」



 続く少年の言葉はゴミだった。

 己の持つ自分を好いてくれる女の子の幼馴染三人のおっぱいを揉みたい、そこに優劣などないと宣言する。


「おい、死ねや」


 そして、今度は少年への殺意で陽キャも陰キャも心を一つとする。


「待って欲しい!みんな!おい!和人!」

 

 そんな中で少年は声を張り上げ、一人の男子を呼ぶ。


「じゃあ問おう!?僕の幼馴染である三人から全裸で迫られたら彼女持ちのお前はどうする!?好きです!抱いて!なんて言われれば!」


「決まっているだろ!?全員抱くに決まっているだろォ!!!つか選べるか!」


 問われた和人の答えは簡単。

 彼女持ちとは思えないとんでもないクソみたいな答えであった。



「当然だよなぁァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!」


 

 だが、そんな和人の言葉に少年は絶叫と共に同意する。


「選べるかぁ!でも、全員で!なんて言った日には殺されるわぁ!全員独占欲強いねんぞ!?」

 

 少年は今にも泣きそうな言葉で告げる。


「だからそう……僕も苦しんだ!彼女たちの幼馴染であることは!僕はこの立場を、手放したくない!僕の美しい幼馴染三人を誰も手放したくない……!友達としての関係を壊したくない……!あぁ!だから生殺しだァ!耐えるほかない!好き好きアピールを全開とし、ボディタッチ多め、おっぱいふよよん!!!良い匂い爆増!!!!!家が近いせいで頻繁に僕の部屋に来るあいつらを相手に……まともに自家発電することも出来ずにただ性欲を抑えるほかないのだァ!」


 母国を否定されたか。

 信じる神を否定されたか。

 大切な人を失ったか───そのように勘違いしてしまうほど悲劇的な様相でクソみたいなことを少年は口にする。


「「「おぉう……」」」


 そんな少年の慟哭に全員が思わず同意してしまう。

 自分であったらと考える。

 常に己との距離が近い美少女幼馴染三人。しかも、好意持ち。だが、三人の中から選べない。だってみんな可愛いから。裸で迫られたら全員YES!だから。違いなんてないから。何を基準に選べと?全員いい子だよ?

 ゆえに手を出せず悶々とし、自家発電もままならないとならべ下の溜まり方はきついだろう。


「いや、でもさっさと答え出せよ。選べないんだったら適当にくじでも引いて付き合って、抱けよ」


「は?こちとら幼稚園から仲いいねんぞ?それで友達関係がなくなったら泣くぞ。常に仲の良さげな百合空間を醸し出すあいつら三人の関係がギスギスしだしたらもっと泣くぞ」


 とある一人の男子がぽつりと告げるごもっともな……まぁまぁのクソ意見に少年は真顔で返す。


「蓮夜ー」


 そんな会議を行っていた中。

 ひょっこりと三人の少女が、神が舞い降りたのかと錯覚するほどの美少女が教室に姿を見せる。


「こっちの用事は終わったから一緒に帰りましょう?待たせてごめんなさいね」


「一緒に帰ろー!」


「……帰る」


 そして、その三人は真っ直ぐに少年だけを見つめて口を開く。


「あっ!僕呼ばれたから帰るね!また明日!」


 三人から呼ばれた少年はカバンを手に取って三人の方へと向かっていく。

 そして、そのままほぼゼロ距離の三人に囲まれて教室を後とし、帰路へとつくのだった。


「「「……」」」


 何と言えば良いのだろうか?


「んだぁ!?ゴラァ!!!」


「やっぱあれマウントだろぉ!?」


「許さねぇ……あいつだけは許さねぇ!!!」


「やっぱ、あいつ死ねぇやゴラァ!!!」


「そうだな。そうだな。そうだよなぁー!あいつにはもったいねぇ!殺して解放してやらねぇと!!!」


 学園三女神。

 見た目だけであればアイドルも霞むような美貌を持ち合わせるが故に女神とさえ称される三人の幼馴染であり、あまつさえ好意をしっかりと向けられている少年、赤城蓮夜にすべての男子が揺るぎようのない殺意を抱いて叫ぶのだった。


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