愛を知りたい音無くんも #アドベントカレンダー2023

12/03 Sun

　寒くなってきたなぁとは思っても、携帯の日付も、黒板に書かれた数字も気にならんかった。十二月がなんだ。期末テストと冬休みがあるだけじゃないか。

　クリスマスにわくわくしたのは昔の話だ。絵本に描かれたようなサンタクロースがおらんことなんて、とうに知っている。

　コンビニに入ると、雪のような生クリームの上に苺が並べんだでっかいホールケーキの写真が出迎えてられた。狙ってるのか、タイミングがいいのか、フライドチキンの香りがただよってくる。

　あたかも、こういう雰囲気を作られると、どうしても傍観者になってしまう。よそはよそ、俺は俺。ケーキにもチキンにも恨みはないが、海老天がのった年越しそばの方がいいし、今は、どちらにも用事はない。

　インフルエンザの妹（サヤ）のためにお使いに来ただけだ。本当に病人なのかと疑うほど、携帯を介してのリクエスト（おねだり）がけたたましい。これ以上に増えるのも嫌なので、言われた通りに期間限定のアイスクリームを探す。

　スピーカーから流れる売り込みを聞き流しつつ、食べ物ばかりの棚に不似合いのぬいぐるみが目に入った。子供向けかと思ったら、遠目でもわかるほど毛並みがいい。茶色の熊は赤いポンチョの帽子をかぶり、白い熊は赤い帽子と、飾り襟で格好を揃えとった。すぐそばには『大切な人にプレゼント☆』と手書きのポップ。

　ふと夏海（なつみ）がよろこびそうだなと思った。そうか、クリスマスプレゼントか。何かをあげようとすれば、遠慮されるけど、クリスマスプレゼントと言えば、貰ってくれるかもしれん。

　それなら、もっと何をあげるか考えてから渡そう。

　久しぶりにわくわくとした十二月になりそうだとよろこんでいたら、アイスクリームのことをすっかり忘れて、しこたま怒られた。

(꜆ ˙-˙ )꜆♡