第20話 虹の輝き
とりあえず、妹姫のリーナと最低限は仲良くなれたと思う。だからこそ、姉姫ミーアとの関係も構築したい。だからといって、妹を放り出して姉の方に行けば、両者からの信頼を失うだろうな。
だから、リーナを通して話をできるのなら最善ではある。受けてくれるのなら、ではあるのだが。まあ、行動しなくちゃ始まらない。王宮に来れる機会が何度あるかなんて分からない。だから、つい急いでしまうな。
「リーナ姫、ミーア姫とフェリシアと、四人で話をしたいんだが、良いか?」
「私を口説いた後に、もう姉さんを口説くつもりなんですか?」
フェリシアのからかいを真に受けたのだろうか。俺としては、口説く意図はないが。それでも、王女姉妹と関係を築きたいのは確かだが。心強い味方になってくれるだろうし、単純に仲の良い姉妹を見たいのもある。『デスティニーブラッド』では、お互いに殺し合っていたからな。幸せなもしもを見たいのは、原作ファンの性だ。
「レックスさんの意図を考えると、カミラさんとメアリさんも連れていけばよいのではないかと」
「ああ、私達を仲良くさせたいんですね。余計な事を」
相変わらず、フェリシアは察しがいい。それを受けて、リーナもこちらの意図を理解したみたいだ。余計な事とは言われているが、俺としては押し通したいところだ。
「俺としては、王族に仲違いされたら面倒なんだよ。国が乱れたら困るんだからな。俺の栄達の邪魔になる」
「嘘つき。でも、良いですよ。レックスさんには、少し恩がありますから。話くらいなら」
何を嘘だと思われたのだろうか。まあ、気にしてもしょうがない。いま大事なのは、リーナが話をする気でいることだ。という訳で、早速行動する。道中で、メアリやカミラも誘った。
「お兄様、また女の人と仲良くしてる……」
「バカ弟は、本当にバカだったみたいね。王族なんて、釣り合ってないのよ」
俺は一体何だと思われているのだろうか。誰彼かまわず女と見れば手出しする人間に見えるのか? いや、仲の良い相手は女ばかりだし、完全に否定するのは難しいのか。だが、近くにいる原作キャラが女だったというだけなんだよ。女にだらしないわけじゃないんだ。そう言いたかった。まあ、原作なんて言葉を口に出す訳にはいかないのだが。
「なるほど。悪くない関係のようですね。だから、私達が気になったんですか?」
「言っただろ。お前たちのせいで国が混乱したら、俺が困るんだよ」
「素直じゃないですわね。リーナ姫のことが、好きなんでしょう?」
フェリシアにからかわれると、メアリとカミラがジトッとした目でこちらを見てきた。本当に、困ってしまう。好きか嫌いかで言えば好きだが、前世があるのに同い年の相手に恋したりしないぞ。10歳だぞ、10歳。俺はロリコンじゃない。
「お兄様……」
「身の程知らずも程々にしておきなさいよ、レックス」
「ふふっ、本当に仲が良いみたいです。羨ましいですね。そんなに良い環境で過ごせて」
当たり前のような会話を、羨ましいと言う。つまり、リーナは普通の会話すらも経験がないのかもしれない。原作では事細かに描写された訳では無いが、周りから軽んじられていたのは知っている。そこから考えると、リーナがどれほど苦しんできたのかが伝わってくる。だからこそ、これから先の未来では、笑顔を見たいんだ。
俺たちは全員で移動して、姉姫ミーアのところに向かう。一応、妹姫リーナのおかげか、特に止められることなく部屋まで向かえた。
「姉さん、会いに来ましたよ。レックスさんが、私達と話をしたいそうです」
「リーナちゃん、私に会いに来てくれたの?」
「違うと言っていたのですが、分かりませんでしたか?」
やはり、リーナはトゲトゲしい。仕方のないことではある。姉のミーアばかりが良い目を見て、自分は雑に扱われてきたのだから。だが、仲を取り持ちたいものだ。少なくとも、一歩くらいは進めたい。
「じゃあ、レックス君は、いったい何の用なの? 話くらいは良いけれど、ふたりきりはダメよ?」
「フィリスに聞いた魔法を使ってみたくてな。だから、俺とミーナ姫、リーナ姫がいれば都合が良いんだよ」
実際には、原作で知った魔法だ。フィリスだって、存在くらいは知っているかもしれないが。とにかく、その魔法が使えれば、俺の意図は伝わるはずだ。そこから、少しでも王女姉妹が仲良くしてくれれば。
「わたくしは仲間はずれですの? 冗談ですわ。あなたの力、見せてもらいますわよ」
フェリシアの冗談は、本気で怖いんだよな。今だって、仲間はずれと言った時の目は鋭かったし。ちょっと、怯んでしまったかもしれない。演技には慣れているつもりだから、態度が崩れていないことを祈るばかりだ。
「お兄様と協力して魔法、良いな……」
「あたしは剣士なんだから、バカ弟と一緒に魔法なんて使わないわよ」
「レックス君は、兄弟仲が良いのね。少し、羨ましいわ」
「姉さんがそれを……いえ、なんでもありません」
姉のミーアは、仲良くしたいんだよな。原作でも描写されていた事実だ。だが、ミーアの方から近づいていったって、妹のリーナが受け入れるはずもない。自分が欲しい物を、全て持っている相手だ。嫌味としか思えないだろう。
「リーナ……ごめんね、レックス君。ところで、フィリスさんって、あの有名なエルフよね。どんな魔法を使うの?」
「ミーア姫は光魔法を、リーナ姫は五属性の魔法を使ってほしい。それを、ぶつけてみてくれ」
「分かったわ。じゃあ、訓練場に行きましょう」
俺も、一発勝負だ。もしかしたら、ふたりは何度もチャンスをくれるかもしれない。だからといって、二度目がある保証はない。一発で、何が何でも成功させる。そのつもりで行くぞ。
「じゃあ、始めてくれ。俺はいつでも良いぞ」
「分かったわ。
ミーアの方から、光の
「はあ、仕方ないですね。
それに合わせて、リーナは隕石を落としていく。五属性を重ね合わせた、最強クラスの魔法。光とぶつかる直前に、俺も魔法を使っていく。
「行くぞ、
隕石と光の間に闇の魔力が挟まり、どちらも闇で侵食していく。光の魔力は反発しようとするが、それすらも取り込むイメージで。光と五属性がぶつかる衝撃で、闇の魔力も吹き飛びそうだ。だが、全力で光と五属性の魔力を取り込んでいく。
しばらくして、虹色に輝く光が出現した。そして、この場にいるものたち全てに、光が祝福を授けるかのように力を与える。俺だって、万能感を得るほどの力。この世界すらも、変えられてしまいそうに錯覚するほどの。いま剣を振れば、きっと山すらも両断できるだろう。それほどに、力であふれていた。
これが、原作における切り札のひとつ、
「全ての属性が、混ざったの……?」
「これが、レックスさんの、やりたかった事なんですか? すごい……」
「面白いものを見せていただけましたわね」
「お兄様、素敵……」
「これが、バカ弟の本気……」
この場にいる全員が、感動している様子だ。当然だろうな。原作においても、最強クラスの技なんだから。原作が始まっていないことを考えると、バランス崩壊だってありえるくらいのものだ。
「分かっただろう? 俺が目指す高みが」
「そうね。これは、確かに王国の切り札になるわ」
ミーアの方は納得してくれた様子。リーナは、どうだろうか。
「だから、私達姉妹で協力しろと。そうなんですね、レックスさん?」
「なら、リーナちゃんと仲良くする理由ができるわね!」
「はあ、仕方ありませんね。今は、レックスさんの思惑に乗ってあげます」
少なくとも、協力するだけの理由はできたみたいだ。今の魔法が王宮の人間に伝われば、きっとリーナを軽んじる人間も減る。そう祈るばかりだ。
さて、最後の問題は、リーナの暗殺未遂。これは、何が何でも防いでみせる。どんな手段を使っても。
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